フィギュアスケートの全日本選手権・女子フリー(25日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)で、ショートプログラム(SP)8位の浅田真央(26=中京大)は114・10点で合計174・42点となり、大会自己ワーストの12位に終わった。若手が台頭するなか、26歳の“大ベテラン”となった元世界女王の現実は厳しいものに。試合後、現役続行の意思を示したが、大目標の2018年平昌五輪へ“奇跡”の道は開けるのか。専門家の意見は…。

 過去6度優勝の女王がまさかの惨敗を喫した。前日のSPで1回転半となった冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒すると、中盤の3回転サルコーで再び転倒。さらに続く3回転フリップからの連続ジャンプは1回転の単発となり、ジャンプでのミスが相次いだ。

「全日本で自分の滑り、練習してきたことをすべて出したかったけど、それができなくて残念です」。大会後には世界選手権(3月)、四大陸選手権、アジア大会(いずれも2月)の代表が発表されたが、そこに真央の名前はなかった。

 ソチ五輪でともに戦った4歳下の村上佳菜子(22=中京大)が「以前は追いかける立場だったけど、徐々に追われる立場になり、追い越された」と話すほど急激に世代交代が進むなか、元世界女王には「限界」「引退」といった言葉もちらついてくる。

 それでも今季、左ヒザのケガにより封印してきたトリプルアクセルに挑んだ真央は「ここまで(状態を)戻せたことは良かった」と前向きだ。報道陣からの「来季も挑戦を続ける?」との問いかけには「そうですね。はい」と、はっきりと現役続行の意思を示した。

 とはいえ、この追い詰められた状況から奇跡的な復活を遂げ、平昌五輪で集大成となる演技を見せることは可能なのか? 大会歴代優勝者の一人で、真央を指導する佐藤信夫コーチ(74)とも親しいフィギュア解説者の杉田秀男氏(81)は「世界で戦う上で、日本には真央のような選手が必要。本人に気持ちがあるならまだまだやれるし、続けてほしい」と話す。

 今季の厳しい結果については「(左ヒザの)ケガの影響が大きい」と改めて分析。トリプルアクセルに挑むまでに回復した今大会でも「体調が万全ではないから気持ちも乗ってこない。それでスピードが感じられなかった」と見ている。

 今回は心・技・体の2つが欠けた状態だったが「技」が秀でていることは間違いない。「世界で評価されるのはジャンプだけではなく、トータルで優れた選手。今回優勝した宮原(知子)選手も特別なジャンプがあるわけではないが、世界で結果を残している。真央は若手にはないスケーティング技術や表現力を持っている」(杉田氏)

 佐藤コーチもトリプルアクセルに挑戦したことを高く評価しており「本人の自信につながるようなことになってくれれば、ありがたい」と、まだまだ復活の目はあると踏んでいる。

 今後に向けて「心」は前向きなだけに、復調のカギを握るのはコンディションのみ。ケガさえ克服することができれば、1年後、平昌五輪の代表発表には真央の名前があるというわけだが…。