フィギュア羽生 新技投入の裏にあの男

2016年11月28日 16時30分

羽生はエキシビションで気合のこもった演技を見せた(ロイター)

 今季初の300点超えでフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦のNHK杯で2連覇を果たした羽生結弦(21=ANA)が、さらなる新技の投入に意欲を示した。27日のエキシビションの前に取材に応じ「これが限界とは決めていません」ときっぱり。絶対王者に君臨する羽生であっても、安泰とはいえないのが今の男子フィギュア界だが、さらなる進化を求める裏にはやはり“あの男”の存在があった。

 

 26日のフリーで、GPシリーズでは初めてクリーンな4回転ループを決めた羽生は、一夜明けて行われたエキシビションの練習で早くも新たな技を披露。4回転ループの後に3回転トーループを付けた連続ジャンプを着氷したのだ。

 

 このジャンプについて問われると「見て驚いた人もいるでしょうけど、平昌五輪に向けてそれも視野に入れてやれればいいかなと思っています」と涼しい顔。難易度の高いコンビネーションジャンプを跳んだという事実以上に、今から来季の実戦投入を考えるレベルに達していることのほうが驚きだ。

 

 4回転サルコーは2年かけて現在の安定感を手に入れた羽生だが「ループは2種類の4回転(トーループ、サルコー)のベースがあるので安定するのも早い」。初めて4回転ジャンプをプログラムに組み込んだころに比べ、ハードルは高くないことを強調した。

 

 自身4つ目の4回転ジャンプとなるルッツについては、来季の実戦投入についてはやや否定的ながらも練習は継続中。さらに「これだけ疲れていても跳べるんだという自信を持つため」とプログラムの最後に4回転トーループや4回転サルコーを跳ぶ練習をしていることも明かした。

 

 進化を止めないのは、羽生のあくなき探究心もさることながら、ハビエル・フェルナンデス(25=スペイン)らライバルたちの追い上げを実感しているから。フェルナンデスは今年4月の世界選手権で羽生に続く合計300点超えで優勝。同じブライアン・オーサーコーチに師事しており、その実力は羽生が誰よりも知っている。スケーティング技術や表現力では羽生をしのぐ部分もあるだけに、常にフェルナンデスよりも難易度の高いジャンプを跳んでおく必要がある。

 

 現に、若手の中には羽生以上に難しいジャンプを組み込む選手も現れ始めた。NHK杯で昨年2位の金博洋(19=中国)、今年2位のネーサン・チェン(17=米国)がその筆頭格。今回は直前で回避したが、チェンはフリーに5度の4回転ジャンプを組み込んでおり、羽生をして「ボクはまだ簡単なことをやっているんだと思うと自信になる」と言わしめた。

 

 平昌五輪まで1年余り。この2人に加え、宇野昌磨(18=中京大)が急成長を遂げれば、フェルナンデス以上の強敵となる可能性もある。

 

「今、成長できるところを成長させて一つひとつ進んでいる実感がある」。金メダルを獲得したソチ五輪以降、世界のトップに立ち続けているのも、羽生が進化を続けているからこそ。2大会連続の金メダルまで、その歩みを止めることはなさそうだ。