1日(日本時間2日)にカナダ・モントリオールで行われたフィギュアスケートの国際大会、オータム・クラシックの男子フリーで、ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(21=ANA)は172.27点をマークしてフリーでも1位。合計260.57点で今季初戦を制し、大会2連覇を果たした。SPで史上初めて4回転ループを跳んで、フリーでも成功。これでアクセルを除くすべての4回転ジャンプが出揃い、男子の“4回転戦争”はさらに激化の一途をたどりそうだ。

 フリーでは、久石譲さんのピアノ曲「ホープ&レガシー」のメロディーに乗せたプログラムを今季初披露した。SPに続き、フリーも冒頭で4回転ループを成功させ、続く4回転サルコーも決める安定した滑りで観客を沸かせた。だが、後半に2度転倒。連続ジャンプが単発になるなど失敗が重なり、4回転ジャンプを3種類4度跳ぶ超高難度の構成には課題も残った。

「点数も低かったし、もっと練習をしなくてはいけないと思った。悔しいです。でも落ち込んだ悔しさではなく、前向きな悔しさ。一つと言わず、10個くらい皮がむけたと思えるよう、この1か月を追い込んでいきたい」

 2位に30点以上の差をつけて優勝しても、口をついたのは反省の弁。「次の試合ではノーミスでやります。絶対に。そうじゃなきゃ羽生結弦じゃない」と次戦のグランプリ(GP)シリーズ初戦、スケートカナダ(28日~)に向けて仕切り直しを誓った。

 羽生が4回転ループを成功させたことで、男子の4回転ジャンプは新時代に突入した。アクセルジャンプを除く、すべての4回転ジャンプが公式戦で成功。つい数年前まで4回転ジャンプそのものがまれだったが、今やいずれの4回転ジャンプも不可能ではないことが実証された。

 これで男子はますますハイレベルな争いになるのは必至。2日、今月開幕のGPシリーズ記者会見に出席した宇野昌磨(18=中京大)は、羽生の4回転ループ成功について問われると「もう、4回転ジャンプは2種類では勝てない。もっと入れていかないとダメだなと思った」と言い切った。

 宇野は4月に国際大会で初成功させた4回転フリップを、前日のジャパンオープン(さいたまスーパーアリーナ)で国内初披露。すでに2種類を習得しているにもかかわらず「4回転フリップ、4回転トーループだけではなく、他のジャンプもどんどん挑戦して、後れを取らないようにしたい」と2種類では遅れているという認識を持つ。4回転ジャンプが1つしか跳べない選手では頂点に立つのは難しい時代とあって、どの選手も必死だ。

 一方で、日本スケート連盟・伊東秀仁フィギュア委員長(55)は「4回転ジャンプだけではなく、内容も注目される」と見ている。勝つためにはジャンプ以外の演技の完成度が高いことが大前提。2018年平昌五輪のプレシーズンとなる今季、新たな技術を取り入れ続ける羽生に触発され、男子の戦いは新時代に突入する。