フィギュアスケート女子で2季ぶりに復帰した浅田真央(25=中京大)は昨年末の全日本選手権で3位に食い込み、世界選手権(3~4月、米ボストン)出場を決めた。とはいえ、復帰時に口にした最低ラインである「(2014年の)世界選手権のレベル」に達したとは言いがたい状態。果たして強い真央は戻ってくるのだろうか? 本紙が探ってみると…。

 真央の課題は休養前と大きく変わってはいない。以前から演技冒頭に組み込んでいる代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の成否が演技全体の出来を左右してしまう不安定さ。何度となくエッジエラーを取られている3回転ルッツの修正も、まだ完全ではない。

 演技の難度によって決まる基礎点や芸術性を評価する構成点は高いものの、ミスが重なり、そのアドバンテージを十分に生かせないのが現状だ。

 真央を指導する佐藤信夫コーチ(74)とも親交があるフィギュア解説者の杉田秀男氏(80)は「トリプルアクセルに入るまでの動きは休養前より良くなっているし、佐藤くんも『その通り』と言っていた」。全日本ではショートプログラム(SP)、フリーとも回転不足でバランスを崩した(フリーは転倒)が、技術的には向上しているという。

 問題は真央自身も「気持ちで負けていた」と話していたメンタル面だ。「思い切りが足りないからスピードが出ていない。全日本に関しては体調面にも問題があったのではないか」(杉田氏)。SPでルッツを回避した“安全策”もコンディションが万全ではなかったとすれば、納得できる。

 そのルッツは全日本のフリーで7年ぶりにクリーンな成功を果たした。「身につけた技術を簡単には忘れないのと同じように悪い癖というのも簡単には抜けない。ただ、練習では改善できているし、試合で一度成功したことでかなり不安はなくなったはず」

 3月末から米ボストンで開催される世界選手権での優勝には、2つのジャンプの成功が不可欠だが、見通しは決して暗くない。杉田氏は「『四大陸選手権』(2月、台湾)に出るということは前向きになっている証拠。本当に弱気になっていれば『もう少し時間が欲しい』となっていたはず。あとは体調。コンディションが良ければ、気持ちも乗ってくる」と見ている。

 完全復活に向け、まずは四大陸選手権がその試金石となる。