フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルで自身の持つ世界最高得点を更新し、男子初の3連覇を成し遂げたソチ五輪金メダルの羽生結弦(21=ANA)の人気が爆騰している。自身は「神」と呼ばれることに反発するなど謙虚な姿勢を崩さないが、その広告効果は女子の第一人者・浅田真央(25=中京大)と同等まで上昇。一方、その裏では羽生のCM出演をめぐる“怪”についても、さまざまな臆測が飛び交っている。

 15日に帰国した羽生はハリウッドスター並みの出迎えを受けた。ファン300人、報道陣60人が空港ロビーに殺到。羽生の乗った飛行機は到着の瞬間からテレビで生中継されるほどのフィーバーぶりだった。

 ショートプログラム(SP)、フリーの合計330点を超えるGPファイナルの演技で、羽生の価値はうなぎ上り。ファンの間では「神」とまで呼ばれ、もはや生ける伝説のような扱いだ。羽生は「全然、神じゃない。ボクからしてみたら応援してくださる方々がむしろ神様。見えないところから力をくださっている」と謙遜したが、そのコメントさえ、また好感度をアップさせたことだろう。

 その一方で、羽生は広告業界からも熱い視線を送られている。大手広告代理店によれば「ダルビッシュや本田圭佑の全盛期の1本1億円には及ばないが、真央ぐらいでもおかしくない」。スポーツ選手としての価値はすでに真央に並び、ギャラは1本5000万~8000万円の試算になるという。だが、ここで一つの謎がある。JALや住友生命、アサヒなど複数のCMに出演している真央に対し、羽生のCM出演は現在、ロッテの1社のみ。演技の様子をCMで流している寝具メーカーの西川産業、入浴剤のバスクリンは出演という形ではなく、いずれも広告契約どまりだ。

 広告代理店関係者は「所属の全日空が3億出しているなら話は別。でも、そうじゃない。普通に考えたらたくさんオファーがあるでしょ。オファーがないんじゃなく、受けないんだと思う」と首をかしげ、次のように話した。

「周りがオファーをブロックして『うまくやっている』と言っても限界がある。『競技だけをやらせたいからCMはやらせない』とか、『タレントみたいにしたくない』とか、絶対、理由があるはず。日本スケート連盟の考え方もあると思う」

 羽生のCM契約が増えれば、スケート連盟の台所も潤う。にもかかわらず“自粛”しているのは、特別な理由があるという見立てだ。

 もちろん、最大目標は2018年平昌五輪での2大会連続金メダル。その時に向け、羽生も止まることなく、上昇カーブを描いていく。抜群の実績に加え、ルックスも併せ持つ若きカリスマ。CMに出ないことによって価値が揺らぐことは何一つないが、これもまた「異次元」の要素を強める理由なのかもしれない。