【スペイン・バルセロナ発】12日(日本時間13日)に行われたフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル男子で、羽生結弦(21=ANA)が330・43点を叩き出し、自身が11月のNHK杯でマークした世界最高得点をさらに更新した。男子初の3連覇の偉業もかすむ異次元のスコアだが、本人はさらなる得点アップを目指し、新技投入にも意欲十分。絶対王者の「限界点」はどこにあるのか――。

 110・95点を叩き出したSPに続き、フリーもほぼノーミス。不滅の大記録と思われたNHK杯の322・40点に約8点上積みし、世界記録を塗り替えた。一夜明けた13日には「正直このプレッシャーの中でよくやったなと驚いている」と話したが、そんな心境だったことを感じさせない演技だった。

 ショートプログラム(SP)に2回、フリーに3回の4回転ジャンプを組み込み、そのすべてで最高3点の加点を獲得する完璧な内容。それでも「『絶対王者』という響きに合うスケーターになったとは思っていない」と謙遜するものの、世界でただ一人300点を超える得点を出す羽生に敵はいない。

 それだけに世界の興味は、得点がどこまで伸びるのかという話に変わりつつある。

 現在の構成でさらに得点が伸びる要素があるとすれば、ステップシークエンス。今大会のSP、フリーとも最高のレベル4に届かず「改善できるように練習していく」と完璧を追い求めている。

 これがレベル4を獲得し、GOE(出来栄え点)でも現在と同じ評価を得られれば、SP、フリーで各1点、トータル2点程度の上積みが可能だ。

 また、女子優勝のエフゲニア・メドベージェワ(16=ロシア)のように、SPで全てのジャンプを後半に集めることで得点を伸ばす作戦もある。体力的に厳しい後半のジャンプは技術点が1・1倍。現在、冒頭に跳んでいる4回転サルコー、続く4回転―3回転のトーループの連続ジャンプを後半に跳ぶことができれば、2・51点の加点がもらえる。

 さらに得点アップの最大の切り札となり得るのは、新たな4回転ジャンプ。羽生のコーチのブライアン・オーサー氏(53)は「この得点と戦うには新たな挑戦しかない。4回転ループに挑むとしても驚かない」。現時点では演技に組み込むレベルではないが、13日のエキシビションのフィナーレで披露し、見事成功。実戦投入の日が遠くないことをうかがわせた。

 SPの4回転サルコーを4回転ループに、フリー後半の3回転ループを4回転ループにすると、合計9・09点アップ。これら全ての要素が重なれば、合計で341点前後まで伸ばせる計算だ。

 ただ一人異次元の世界にいる羽生が次戦の全日本選手権(25日~、札幌・真駒内アイスアリーナ)でも歴史を塗り替えるのか。世界から注がれる視線は今まで以上に熱いものとなりそうだ。