【カナダ・バリー15日(日本時間16日)発】フィギュアスケート男子のソチ五輪金メダリスト・羽生結弦(20=ANA)が今季初戦に圧勝した。オータム・クラシックでショートプログラム(SP)に続き、フリーでも184・05点で1位となり、合計277・19点で貫禄のV。3回入れた4回転ジャンプのデキに不満を見せたが、日本スケート連盟の橋本聖子会長(51)は五輪王者の“ミス”を大絶賛した。

 今季のフリーに採用した楽曲は映画「陰陽師」の「SEIMEI」。笛や和太鼓が鳴り響く中で“平成の安倍晴明”に扮した羽生の演技に注目が集まった。

 自身初の和のプログラムは4回転ジャンプを3本組み込む超高難度。SP首位発進の羽生は冒頭の4回転サルコーを鮮やかに舞って着氷。続く4回転トーループも手をつきながらなんとかこらえる。しかし、後半の4回転トーループは転倒。2つのトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)にもミスが重なった。

 ジャンプの基礎点が上がる後半勝負に不安を残す結果に「まだ4回転を3つ入れた構成を決められていないのが悔しい」と唇をかんだが、その表情に暗さはない。「点数は自分が思っていた以上に評価された。試合勘のない中でサルコーとトーループの4回転を立てたことは1つの収穫になる」と前向きだ。

 橋本会長も4回転ジャンプの失敗よりも、羽生の果敢な挑戦を高く評価する。「滑り出しは好調じゃない?(今季は)すごく自分に多くの課題を与えてやってるから。難度の高いのにチャレンジしてるでしょ。いい傾向だと思う。最初から守りにいってないし」

 本番はあくまで2連覇をかけて臨む2018年平昌五輪。「彼がそういうふうに目指してやっていこうとしてたことだから、今年はどんどん冒険をしてほしい。今年しかできないことをやる。今シーズン、来シーズンと全部やり尽くして(3年後の五輪)本番だから」と続けて、羽生の“3か年計画”を後押しした。

 次戦はGP(グランプリ)シリーズ第2戦スケートカナダ(30日開幕、レスブリッジ)。五輪王者は「一呼吸おいてからスケートカナダに向けてたくさんのことを調整していかないといけない」と気を引き締め、12月のGPファイナル(バルセロナ)での3連覇をしっかりと見据えた。