羽生結弦の足首はとっくに限界を迎えていた それでも4回転を追求するワケ

2022年07月20日 05時15分

SEIMEIポーズを披露した羽生(東スポWeb)
SEIMEIポーズを披露した羽生(東スポWeb)

〝決意表明〟の舞台裏とは――。フィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦(27=ANA)が19日、都内で会見を開き、第一線を退く意向を表明した。今後は競技会には出場せず、プロアスリートとして活動していく。かねて今後の去就が注目されてきた中、このタイミングで発表した理由はどこにあるのか。その裏側には自らの体と向き合い、ファンを第一に考えてきた男の信念が隠されていた。

 感謝の気持ちが詰まった1時間だった。北京五輪後に「(競技かアイスショーか)フィールドは問わない」と語って以降、公の場で自身の今後について明言してこなかったが、ついに重い口を開いた。「プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意しました」。かねて羽生は自分の言葉で伝えることにこだわってきた。「自分の口から決意を言いたいなと思っていたので、事前に大切な人たちに言うことはできませんでした」。複数の関係者によると、日本スケート連盟に報告したのもわずか数日前。どんな場面でも自らの信念がぶれることはなかった。

 長年にわたり、世界の第一線で戦ってきた羽生の体はボロボロだった。「最終的に引退の決断に至ったのは北京五輪が終わってからです。帰ってきてしばらくして、足首を治すための期間は痛くて滑れなかった」。足首の痛みに悩まされ、平昌五輪、北京五輪は痛み止めに頼りながら試合に出場。フィギュア関係者からは「捻挫しているところは骨折と違って(靱帯が)伸びてしまっている。言い換えれば、ゴムが伸びるような状態になっている」との証言もあり、限界をゆうに超えていた。

 ただ、夢はあきらめていない。平昌五輪後から「唯一のモチベーション」と公言してきたクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の習得にも、引き続きチャレンジしていく。「現在も4回転半の練習を常にやっています。現段階でも『もっとこうやればいいんだな』とか『もっとこうできるんだな』という手応えがあります。今は伸びしろをいっぱい感じています」。足首の回復に努めながら、まだ見ぬ景色をこれからも追い求めていくのが羽生結弦という人間だ。

 世間の目には「引退」と映るかもしれない。しかし、羽生の視点では「始まり」というスタンスだ。「むしろここからがスタートで、これからどう見せて頑張っていくかが大事だと思っています。そういう意味で新たなスタートが切れたなと思っています」。まだまだスケート人生は終わらない。会見の最後に響いた「ありがとうございました」の声は、次なる伝説の幕開けを告げる合図だった。

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