これが時代の流れか。フィギュアスケートの平昌五輪女子シングル代表・宮原知子(24=木下グループ)が26日、自身のSNSで現役引退を表明した。世界選手権(フランス・モンペリエ)の女子シングルで坂本花織(シスメックス)が金メダルを獲得して日本フィギュア界が歓喜に沸く中、元全日本女王は静かに身を引く決断を下した。

 宮原は自身のブログで「唐突なご報告で申し訳ございません。いつが良いか思案した結果、自分の誕生日にしよう!と思い、本日となりました」と経緯を説明し、「スケート人生で1番、自分と向き合い、毎日を大切に過ごしてまいりました。これまで以上に、もうこれ以上はできないと納得いくまで練習し、試合に臨んだシーズンでした。私の中で悔いはなく、やりきったという気持ちでいっぱいです」と胸の内を明かしている。

 実績は申し分ない。全日本選手権は2014~17年に4連覇。15年に世界選手権銀メダル、グランプリ(GP)ファイナルでも15、16年に銀メダルを獲得するなど女子フィギュア界を牽引してきた。

 そのスケーティングは「世界一の美しさ」と言われ、誰もが認める表現力の持ち主。しかし、その一方では「ジャンプが低い」との指摘が付きまとった。ロシア勢に代表されるように、いまや女子のシニアでも4回転は当たり前の時代。その流れに逆らい、短所を補いつつ自身の長所を伸ばす努力を続けてきたが、高難度ジャンプの基礎点がモノをいう現行ルールでは太刀打ちできなかった。

 ロシア不在の世界選手権で坂本は4回転はもちろん、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)すら入れない構成で優勝。表現力や出来映え点(GOE)を磨いてつかみ取った価値ある金メダルだったが、その偉業を誰よりも達成したかったのが宮原だろう。

 くしくも坂本の金メダルと同じタイミングでの引退発表となったが、宮原は「今後の夢は沢山ありますが、まずはプロスケーターとして自分のスケートを極め、新境地を開いていけるよう」と今後のビジョンを明かしている。ジャンプでは世界に勝てなかったが、誰にも負けない「美しいスケーティング」があればプロスケーターとして輝けるに違いない。