20日に閉幕した北京五輪の取材現場で取材記者はさまざまなハプニングに遭遇した。フィギュアスケート男子4位の羽生結弦(27=ANA)に中国メディアが用意していた〝まさかの質問〟の内容とは? 大会期間中にお伝えし切れなかった「支局便り」の番外編をお届けする。


【中国・北京発「支局便り」】開会式前に現地入りしてから、羽生の中国での絶大な人気を何度も目の当たりにしてきた。競技会場で熱心に声援を送る観客、スマートフォンで本人の写真や動画を撮影して大喜びするボランティアたち…。そんな中、羽生に匹敵する日本人の〝超人気アスリート〟が、もう一人いたことを実感する出来事があった。

 羽生は10日に行われた男子フリーで人類初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦。惜しくも成功には至らず、3連覇を逃した。演技を終えた羽生は、何を語るのか。多くの報道陣が待ち構える中、記者の隣に立っていた中国のメディア関係者のスマートフォンの画面が目に入った。

「福原愛さんがあなたに応援コメントを出しています。このことを知っていますか? これについての感想を聞かせてください」

 その男性は、どうやら必死に質問を日本語に翻訳していたようだ。実は、卓球女子で元五輪メダリストの福原愛さんが、羽生のフリーの演技前に中国版TikTok「抖音」に動画を投稿。日本語で「北京五輪お疲れさまです」と切り出すと「日本から応援しております。私が選手のとき激励してくれたことを覚えています。今日のフリー、頑張って! ずっと応援していますよ!」と中国語でエールを送っていたのだ。

 両者はともに仙台出身のアスリートで共通点は少なくない。ただ、すでに福原さんは現役を引退しており、競技も異なっている。少なくとも記者には、羽生に福原さんの質問をする発想は全く浮かんでこなかった…。中国における福原さんの根強い人気が垣間見えた。

 羽生がコメントしていれば、中国は大いに盛り上がったに違いない。時間の都合で男性が尋ねる機会がなかったのは、少し残念に思った。