謙虚に夢舞台へ。フィギュアスケートの全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)の女子シングルで3年ぶり2度目の優勝を果たし、来年2月の北京五輪出場を決めた坂本花織(21=シスメックス)が27日、歓喜から一夜明けた心境を語った。 

 Vの瞬間は感情をあらわにし、中野園子コーチと抱き合って号泣。4歳の時に出会った恩師は「自分より自分のことを知っている」といい、大会前には「代表発表の会場にたくさんの選手が集まった中、自分の名前が呼ばれなくていいの?」と言われ、闘志に火がついたという。

 これまでは慢心があった。シニア1年目の2018年に平昌五輪出場。その後はグランプリ(GP)ファイナルや世界選手権で表彰台に立ち、18年の全日本選手権では当時シニアデビューして飛ぶ鳥の勢いだった紀平梨花を逆転して優勝した。「自分の中で目標にしていたことが全部かなってしまって、本当に燃え尽きてしまった」。練習中には「もう大丈夫だろう」と妥協することもあり、歯車が狂っていった。

「これぐらいでいいやって思えるほど自分は天才じゃない。今思えば、何でそんなに満足って思っていたんだろう」

 心を入れ替え、自分を追い込んだ。苦しんだ分だけ満足が得られることを体に叩き込み、充実した心と体を取り戻した。

 日本女子エースとして五輪へ臨む思いは? そう問われると「自分がエースと思ったことが全くなくて、本当に選ばれた3人(坂本、樋口新葉、河辺愛菜)は横並びだと思っている。自分が引っ張っていこうとか全く思っていない」と答えた。だが、チームを盛り上げるのは間違いなく坂本だ。「自分も含めてみんな緊張すると思うので、ちょっとでも和ませれば」。〝陽キャ〟を全開にし、打倒・ロシアに打って出る。