【中国・上海27日発】フィギュアスケートの世界選手権男子ショートプログラム(SP)で、日本人初の連覇を目指す羽生結弦(20=ANA)が95・20点の今季ベストで首位に立った。今季は故障やアクシデント続きだったにもかかわらず、安定感のある演技を見せて世界トップの座をキープ。夢の2018年平昌五輪での連覇に向け、大きなカギになるのが「お休み」だ。

 羽生が登場すると、女性ファンの悲鳴にも似た歓声が会場中にこだました。冒頭の4回転トーループで着氷が乱れたが、転倒せずこらえる。助走が短く難しいトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を鮮やかに決めると、今季不調だった3回転ルッツ―3回転トーループの連続ジャンプも成功。“定位置”の首位でフリーに折り返した。

 羽生は「一つひとつ全部楽しんでできた。4回転ジャンプでミスがあってちょっと悔しいが、明日に向けてのいい課題」と笑顔を見せた。ブライアン・オーサー・コーチ(53)も「素晴らしかった。徐々に力強くなっていった」と愛弟子の演技を絶賛した。

 一つのジャンプでミスをしても、他の要素と表現力できっちりカバーしてしまう強さが羽生にはある。「羽生は強い。世界一の選手。彼に勝つのは容易ではない」と2位につけたハビエル・フェルナンデス(23=スペイン)も脱帽するほどだ。このままいけば、18年平昌五輪でも十分連覇が狙える。そのために何より大切な課題が休養をとることだという。

「最近は世界選手権シーズンが終わっても、行事が多すぎて休む時間がとれない。しっかり休むことも大切なこと。ケガをしっかり、治しきらなければ」(あるフィギュアスケートコーチ)

 今季の羽生はまさに故障とアクシデント続きだった。前半には腰を痛め、昨年11月の中国杯では中国選手と衝突し、左大腿部など5か所を負傷した。昨年末には尿膜管遺残症のため、腹部を4センチ切る手術を受けた。今年に入っては右足首を捻挫。それでも、試合に出場し続けた。

 世界選手権が終わっても、4月には日本が出場する国別対抗戦(東京)やアイスショーなど絶え間なくイベントが続く。日本フィギュア界の顔になった羽生にオファーが殺到するのは当然のことだが、先を見据えれば休む勇気も必要だというのだ。

 28日のフリーに向けては「演じられる幸せを感じて滑りたい」と話した若き王者。今後の長期政権樹立へ、まずは体調を万全にしたいところ。それを維持できれば、3年後まで“絶対王政”が続きそうだ。