勢力図は変わるのか。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ初戦のスケートアメリカ(米ラスベガス)は男子の絶対王者ネーサン・チェン(米国)が2018年の平昌五輪5位以来となる約3年8か月ぶりのV逸。ショートプログラム(SP)では冒頭のジャンプで転倒、フリーでも2つのジャンプでミスがあり、3位で大会を終えた。

 一方、これまで善戦しながらも五輪2連覇の羽生結弦(ANA)やチェンの後塵を拝してきたビンセント・ジョウ(米国)がSP、フリーともにトップで涙の初優勝。平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)は2位となり、北京五輪シーズンは開幕から波乱の決着となった。この結果は何を意味するのか。連勝記録が途絶えたチェンを不安視する声もあるが、元国際審判員の杉田秀男氏は「特に心配ないでしょう」と断言する。

「確かにネーサンがSPとフリーを両方とも揃えられなかったのは非常に珍しい。しかし、シーズン初めの結果ってあまり今後の判断材料にはなりません。新しいプログラムを滑る場合はトライする側面もある。特に彼は目的に向かって計算できる。点を稼げるジャンプをきちんとコントロールできるようになれば本来の結果を出せますよ」

 チェンの今季フリーは「4回転6本」という驚がくのプログラム。今大会は前半の4回転ルッツ、4回転サルコーでミスがあったが、もともと基礎点が高いだけに滑り込んでいけば最終的に恐るべき点数を叩き出す可能性もある。

 現在、羽生は人類初となるクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦中。正式に北京五輪出場の意向を明言していないが、今季もこの2人が引っ張っていく図式となりそうだ。