フィギュアスケートの進化が止まらない。2日に行われたジャパンオープン(さいたまスーパーアリーナ)で女子6人中4人がトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に挑戦し、大きな反響を呼んでいる。

 3回転半を世界で初めて成功した女子はアルベールビル五輪銀メダルの伊藤みどり氏。それ以降、日本では元世界女王の浅田真央、現全日本女王の紀平梨花(トヨタ自動車)ら限られたスケーターの代名詞だった。今回の大会では18年世界選手権銀メダル・樋口新葉(明大)、19年全日本ジュニア女王・河辺愛菜(木下アカデミー)、20年同女王・松生理乃(中京大中京高)、平昌五輪4位・宮原知子(木下グループ)が果敢にチャレンジ。樋口と河辺の2人が成功させ、今後も使い手が飛躍的に増えそうな勢いだ。

 この現象について、フィギュア界の草創期を知る元国際審判員の杉田秀男氏は「これまで選手たちは『特定の人間しか跳べないから自分は無理』と思い込んでいた。でも、一人が跳ぶことで『私もできる』って相乗効果が生まれるものです」と説明。さらに、その背景について「スマホで手軽に映像を確認できるのは大きい」と指摘した。

 真央が活躍した約10年前もパソコンなどを駆使すれば映像は見られたが、スマホが普及した今はリンク内で撮影し、その場でチェックが可能。「海外選手の映像を見てイメージを膨らまし、すぐに実践できる。難しいジャンプが身近になった」(杉田氏)。実際、松生は「いろんな選手のいいところを見て勉強しています」とロシア勢のフォームを研究している。

 時代の進歩とともに、氷上以外の〝情報戦〟も世界で戦う上での重要なカギを握りそうだ。