【スペイン・バルセロナ13日(日本時間14日)発】フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル男子フリーで、ショートプログラム(SP)首位の羽生結弦(20=ANA)が194・08点の今季世界最高得点をマークし、合計288・16点で圧勝。日本人男子初の大会2連覇を果たした。11月の中国杯での激突流血騒動からわずか1か月で復調し、2位に34・26点差をつける驚異的な強さを披露。日本スケート連盟からは「無敵」との声が上がるなか、“長期政権樹立”の根拠とは…。

 別次元の滑りで、他を圧倒した。冒頭2本の4回転ジャンプをお手本のようにきれいに決めると、滑らかなスケーティングでも観客を魅了。最後のジャンプで転倒したものの、それ以外はほぼ完璧な演技。SPに続き、フリーでも今季世界最高得点をマークした。転倒がなければ、史上初のフリー200点超えもあった。羽生も「優勝よりも、自分の演技ができたことのほうがうれしい。ほぼ完璧だった」と充実の表情を浮かべた。

 中国杯フリー(11月8日)前の6分間練習で中国選手と衝突し流血負傷。NHK杯(同28、29日)では万全の体調に程遠く4位に終わったが、これで完全復活。GPファイナル2連覇は日本人男子では初で、過去にも男子ではエフゲニー・プルシェンコ(32=ロシア)、パトリック・チャン(23=カナダ)の2人しかいない快挙だ。しかも、昨季のGPファイナルから主要タイトルを全て獲得し、今大会は2位のハビエル・フェルナンデス(23=スペイン)に30点以上差をつける圧勝劇。日本スケート連盟の小林芳子強化部長(58)が「フリーの内容は完璧に近い。才能があって気持ちも強い。しばらくは無敵だと思う」と舌を巻くのもうなずける。

 羽生の無敵時代到来は、単なる願望には終わらない。「羽生のレベルなら、ライバルがどうだとかではなく、本人の体調が万全かどうか。たとえジャンプで失敗しても、スケーティングや表現力などの力量が高いので、演技構成点で高得点が出る」(日本スケート連盟関係者)ともはや独走態勢に入っているからだ。

 今大会でも、SP、フリーともにジャンプで転倒したが、得点への影響はほとんどなかった。今後もよほどの失敗がない限り、大負けはしないだろう。

 さらに驚くべきは伸びしろがあることだ。19歳で五輪王者になったが、まだまだ線が細く、成長に合わせ筋力、体力をつけることを課題に掲げてきた。今季はシーズン前に腰を痛めるアクシデントがあって、練習量が減っていただけに「今後、体力がついたときにどれだけ強くなるか」(同)とまだまだ今後の伸び幅は残されている。フリーでは3回の4回転ジャンプを予定するなど、基礎点はさらに上がる。ライバルとなりそうなのは今季は休養を選択したチャンくらいで、羽生の牙城は揺るぎそうにない。

 正真正銘、完全復活を果たした若き王者の次の戦いは全日本選手権(25日~、長野)だ。国内大会で日本のライバルに負けるわけにはいかない。「ファン、チーム、関係者のサポートがあってこの結果になった。存分に体を使える幸せを感じた。今スケートができることが一番の幸せ」と話す絶対王者は「向上心は持ち続けたい。そういうところは子供であり続けたい」とさらなる進化を予告する。充実の黄金期を迎えそうだ。