フィギュアスケートのGPシリーズ最終戦NHK杯(大阪)でソチ五輪金メダルの羽生結弦(19=ANA)は4位に終わりながらも、6番目の最終切符でGPファイナル(11日開幕、スペイン・バルセロナ)出場を決めた。「日本人最下位として、思い切って一番上を目指したい」とファイナル連覇を目指すなか、最大のライバルとして、地元スペインのスターで日本でも一躍脚光を浴びた“あの男”が挙がっている。

 GPシリーズ第3戦・中国杯での流血事故から約3週間で復帰したものの、悔しい4位。フリーの演技から一夜明けた30日、羽生は「昨日はよく眠れなかった。悔しさで寝たり起きたりうなされた」と振り返った。それでも常に前向きな五輪王者は、次の戦いの舞台GPファナルに視線を向けた。「ぎりぎりで最後の1枚の切符をつかんだ。五輪王者でも世界王者でもなく挑戦者として頑張りたい。日本人最下位として、思い切って一番上を目指したい」と優勝に目標を定める。


 羽生にとっては日本人男子初の連覇を目指す場だ。日本からは町田樹(24=関大)、無良崇人(23=HIROTA)が出場。優勝を目指すライバルになるが、「最大の強敵」ともくされているのが地元スペイン代表でソチ五輪4位のハビエル・フェルナンデス(23)だ。


 GPファイナルがスペインで行われるのは初めてのこと。フィギュアスケートでは同国初のシニアビッグイベントになる。スペインスケート連盟の会長は国際オリンピック委員会(IOC)会長を務めた故フアン・アントニオ・サマランチ氏の娘、マリア・テレサ・サマランチ氏。スペインは決して冬季種目が盛んな国ではないが、同女史が熱心に働きかけて、GPファイナルの招致に成功したという。


「(招致の理由は)フェルナンデス選手が世界の舞台で活躍していることが大きい。彼がいるので大会は盛り上がります。またサマランチ会長もスペインのスケート界を盛んにしようと熱心です」(国際スケート連盟に詳しい関係者)

 まさに今回のGPファイナルはフェルナンデスが“主役”なのだ。同国初の大イベントだけに本人が奮起するのは当然のことで、地元の声援を一身に受ける。GPファイナル出場も早々に決めており、調子もまずまず。何より、最近では安藤美姫さん(25)がツイッター上で恋人宣言し、注目を集めた。公私ともに充実しており、羽生と同じブライアン・オーサー氏(52)に師事する同門生が強敵になるのは間違いない。


 ただ、実力は羽生の方が一枚上だ。残る2週間で完全復調すれば、優勝は十分可能と言える。この日は第3戦中国杯の6分間練習で衝突した影響について「やはり、トラウマじゃないが(6分間練習で)潜在意識のなかで『周りを見ないと』というのがあって、集中しきれなかったんじゃないかと」と明かしている。それでも「(GPファイナルでは)間違いなく解消されます」とこれまで通り強気。「ここまでボロ負けしたのは小学生以来。でももう子供じゃない。自分を信じられるかどうかは自分次第という精神を持ちながらやりたい」。鋼のメンタルで“噂の男”に挑むつもりだ。