NHK杯強行出場 羽生に意外な“勝算”

2014年11月27日 18時10分

練習を終えた羽生は、報道陣に無言で引き揚げた

 ソチ五輪フィギュアスケート男子金メダリストの羽生結弦(19=ANA)が26日、グランプリ(GP)シリーズ最終戦となるNHK杯(28日開幕、大阪・なみはやドーム)出場を決めた。GPシリーズ第3戦・中国杯の公式練習中(8日)に中国選手と衝突し、頭部、左太ももなど5か所を負傷。全治2~3週間で出場も危ぶまれていたが、26日に行われた非公開練習で状態を確認し、最終決断した。衝撃のアクシデントからわずか3週間弱。無謀な挑戦との声も出ているが、強行出場の裏には、意外な“勝算”があった。

 羽生はNHK杯に強行出場するのか。大きな注目を集めた最終決断を前に、多数の報道陣がなみはやドームに殺到した。練習は非公開。会場も完全にシャットアウトされるなど、緊張感が漂うなか、羽生の練習はスタートしたという。

 約1時間後、日本スケート連盟の小林芳子フィギュア強化部長が報道陣の前に姿を現し、羽生についての説明を行った。「練習後に本人、ドクター、我々(日本連盟)で協議した結果、予定通り出場します。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、4回転トーループ、サルコーもやっていました。成功も失敗もあり、いつもどおりの様子です。ドクターの所見でも異常は見られず、本人は『両足に多少の痛みは残っているが、頑張る』と話していた」

 今回の出場については世間でも賛否両論が出ているため、小林強化部長は反響の大きさを考慮し、質問を一切受け付けなかった。ただ、コメントからは「無理を押しての参加」という印象はぬぐえない。しかも周囲からは、負傷の再発などの危険性も指摘されている。

 あるコーチは羽生サイドが下した決断の裏事情をこう解説する。「(休養する選手も多いため)無理をして出るほど、五輪翌年のNHK杯やGPファイナルに価値はないですよ。すでにビッグタイトルを取っている彼が、そんな大会に負けるかもしれない状態で出るのは考えにくい。勝つ自信があるんでしょう」

 昨季はGPファイナル、ソチ五輪、世界選手権とフィギュアスケート界の“グランドスラム”を達成。もはや「出場することに意義がある」というレベルの選手ではない。つまり、NHK杯で勝てる自信を持っているからこその出場宣言というわけだ。

 実際にこの日の非公開練習では、故障明けとは思えないほど、キレのある動きを披露した。関係者の話を総合すると、難易度の高い4回転トーループを何度もきれいに成功させ、さらに難しい4回転サルコーも着氷。50分間で20回近くのジャンプに挑戦し、失敗はあっても、転倒は一度もなし。選手3人が同じリンクで練習したため、他選手に急接近し、ヒヤリとする場面もあったが、冷静に対処していたという。

 中国杯で羽生と衝突した閻涵(エン・カン、18=中国)は、GP第5戦フランス杯(22、23日)に出場したものの「やはり本来の滑りではなかった」(フィギュア関係者)とアクシデントの影響を感じさせた。一方、羽生はこの日に関しては好調をアピールしており、試合に向け不安はないようだ。自分の滑りにも自信を深めている様子で、不安の声を一掃して2年連続の完全制覇に突き進む。