2010年バンクーバー五輪フィギュアスケート男子の銅メダリスト・高橋大輔(28=関大大学院)が14日、岡山市内で会見を行い、現役を引退することを発表した。圧倒的なファン数を誇る人気スケーターだけに、今後の進路に注目が集まる。


 高橋はバンクーバー五輪前に右ヒザ靱帯断裂の重傷を負いながら、手術を経て復活し、日本男子初のメダルを獲得。直後の世界選手権では金メダルに輝き、12年のグランプリファイナルで優勝するなど名実ともに世界のトップスケーターとなった。初出場の06年トリノ五輪と合わせて3大会連続の出場となった今年2月のソチ五輪では、右足の故障を抱えながら渾身の演技で6位入賞。3月の世界選手権は欠場し、今季2014―15年シーズンは休養の意向を示していた。


 だが、ソチ五輪の日本代表選考会となった全日本選手権前の昨年11月末に右脛骨骨挫傷。その影響は大きく、五輪後も現役続行については慎重な姿勢を崩さなかった。「やり残しがあれば続けるかもしれない」とも話していたが、一線から退く決意を固めた。


 とはいえ、14日朝に一部ネットで引退を伝えられたことに対して、高橋の関係者は憤りを見せている。「まだ親にも言っていないし、所属(関大大学院)にも伝えていない。スケート連盟にも引退届を出していない。その中でこういう報道が出たことは遺憾」。早急に関係各所に報告を済ませ、その後に正式発表となった。


 世界屈指の表現力と甘いマスクで、日本だけでなく世界的にもファンが多い高橋。大会に出場するとなれば高橋目当てでチケットは飛ぶように売れ、関連グッズの売れ行きも他の選手とは比べ物にならないくらい多い。同じくソチ五輪後に「ハーフ・ハーフ」と去就を発表していない女子の浅田真央(24=中京大)とともに日本のフィギュア界を引っ張ってきただけに、今回の引退が各方面に与える影響は大きい。


 関係者は高橋の今後の進路について「指導者になるのがいいのでは」とコーチへの転身を予測。だが一方では、芸能界進出の可能性も広がっている。ソチ五輪の出場を逃し、現役引退した織田信成(27)は今やバラエティー番組などに引っ張りだこの人気者で、3月の世界選手権を最後に引退したソチ五輪8位の鈴木明子(29)も多くの番組にテレビ出演している。自分を表現し、プロデュース能力に長けているフィギュアスケート選手は話術も冴えているため、タレント向きという声は多い。


 圧倒的な女性ファン数を誇る高橋だけに、織田や鈴木以上の人気が出るのは間違いなく、民放関係者は「あれだけの才能をテレビが放っておくはずがない」とオファーが殺到することを予想している。それ以外にもファッション界なども熱視線を送っているといわれ、引く手あまたの状態だ。


 日本に空前のフィギュアブームを呼んだ立役者の高橋。その偉業もさることながら、今後の“第2の人生”もバラ色であることは確かなようだ。