男子フィギュア界に進境著しい若者がいる。昨年の全日本選手権3位となり、3月22日開幕予定の世界選手権(ストックホルム)の代表を決めた期待の星、鍵山優真(17=星槎国際横浜)だ。

 28日に行われた愛知冬季国体(名古屋市、日本ガイシアリーナ)の少年男子ではショートプログラム(SP)、フリー合わせて合計270・82点で優勝。同学年でライバルの佐藤駿(16=埼玉栄高)に約30点の大差をつける圧勝劇だった。鍵山は23日にもインターハイ(長野)で異次元Vを飾っており、もはやジュニアでは敵ナシ状態だ。

 こうなると、いよいよ世界選手権が楽しみになってくる。新型コロナウイルス禍で開催は不透明だが、出場となれば五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)、平昌五輪銀メダルの宇野昌磨(23=トヨタ自動車)と世界の舞台で対決となる。

 全日本3位で代表の座を射止めた後の会見では、優勝した羽生、2位の宇野と同席。格上2人の先輩を前にやや緊張気味の鍵山は「羽生選手や宇野選手の存在は、まだまだ遠いなと実感した」と謙遜したが、両者からは絶賛の声がやまなかった。

 鍵山の最大の武器を「負けん気の強さ」と言い切る羽生は「あれだけ勢いを使ってジャンプが跳べるのはホントにすごいこと。衝撃をずっと体で耐え続け、その中でちゃんとケガせず、自分をコントロールできている。自分自身も勉強させてもらっているし、尊敬しています」と最高の賛辞を贈り、宇野は「単純に僕よりうまいなって思うところがたくさんありすぎて」と舌を巻いた。

 先人たちによって築き上げられた日本のフィギュア界には〝スターの系譜〟がある。女子ではアルベールビル五輪銀メダル・伊藤みどり、トリノ五輪金メダル・荒川静香、女子史上初の4回転ジャンパー安藤美姫、バンクーバー五輪銀メダル・浅田真央が名を刻み、それは紀平梨花(18=トヨタ自動車)に受け継がれた。

 男子では今まさに鍵山が〝スターのバトン〟を羽生、宇野から渡されようとしている。くしくも宇野は前述の会見でこう言った。

「スケート界は不思議だなって。絶対に途切れずに、実力のあるうまい選手が何かしらの形でこうして現れる。時の流れを感じました(笑い)」

 そして、最後に鍵山は「羽生選手、宇野選手は最終目標。次に戦う時までに、どれくらい近づけていけるか。もっと練習して確認できればいい」と語った。2人を両脇に従え、表彰台の真ん中に立つ鍵山の姿が見られる日はくるだろうか。