フィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビッグハット)で優勝した五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)が27日、試合後に取材に応じた。

 これまでアスリートとして数々の金字塔を打ち立て、国民栄誉賞も受賞。そんな王者は「スケート人生の一番先の最終地点には何が見えているのか?」という問い対し、ほぼ即答の勢いで 「とにかく4回転半、試合で降りたいです。試合で」と言い切った。

 かねて人類初となるクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への思いは口にしてきた。「自分のプライド」と表現したこともある。新型コロナウイルス禍でスポーツの価値が問われている今、その背景も踏まえて、こんな思いを激白した。

「自分の心にウソをつかないのであれば…うん、やっぱりそこ(4回転半)までたどり着かないのであれば、今スケートを頑張る理由というか、この社会の中、この世の中で自分の気持ちを押し通してまでトレーニングさせてもらうっていう理由がなくなっちゃうなって思う」

 競技者としての最終地点を目指す中、周囲を取り巻く状況も冷静に見ている。そんな思いが「トレーニングさせて〝もらって〟」などの表現に映し出されている。夢に向かう気持ちを、さらにこう説明した。

「4回転半っていうとても険しい壁に向かって今、突き進んでいる。そこへのハードルがすごく高い。手すりとか何もないんじゃないかなっていうくらい高い壁なんですけど、それを幻想のままにしたくない。絶対に自分の手でつかみ取って、その先の、壁がない壁の先を見たい。それだけが今、この世の中で自分がスケートをやれる理由かなと思っています」

 自分に限界を決めず、ストイックに突き進みながら、羽生はその環境に感謝する気持ちを忘れていない。