フィギュアスケートの女子エース紀平梨花(18=トヨタ自動車)が全日本選手権(25日開幕、長野・ビッグハット)で今季初戦を迎える。新型コロナウイルス禍で前代未聞のシーズンとなり、前年女王にとって実戦の舞台は約10か月ぶり。連覇を狙う今大会は新プログラム、新衣装で臨む。異例な状況で戦いの火ぶたが切られるが、紀平はいつも通りマイペース。だが、内に秘めた勝利への思いは人一倍だ。そのこだわりの勝負アイテムを本紙に初公開――。


 今年はコロナによってすべてが失われた。紀平にとって最大の目標だった3月の世界選手権は中止。11月のグランプリ(GP)シリーズ第4戦・フランス杯では新プログラム、新衣装を披露するはずだったが、それもコロナによって消滅した。こんな異例な状況にもかかわらず、紀平はいつものように冷静に現実を見つめ、淡々と準備を進めてきた。

 夏場は新たにマシンを使った筋トレを導入。内もも、裏ももを重点的に鍛え上げた。新しいプログラムは実に挑戦的だ。幼稚園時代から逆立ちができたほどの抜群の運動神経を生かし、ショートプログラム(SP)には片手側転という珍しい大技が組み込まれ、すでにファンの間で〝神演目〟と呼ばれている。11月下旬から約1か月間、国内で氷上練習を敢行。SP(25日)でノーミスなら、フリー(27日)の冒頭で4回転サルコーに挑戦する可能性が高い。

 今大会は2連覇がかかる。これまでも紀平は「自己ベスト更新」を目標に掲げ、順位のことは決して口にしなかった。だが、表に見せないだけで勝負へのこだわりは強い。秘めたる思いを紀平はこう話した。

「ゴールド(金色)と数字の『1』は意識して過ごしています。そこまで金色で固めてはいませんが、とりあえず銀は選びたくないですね(笑い)」

 そんな紀平のこだわりの勝負アイテムが金色に輝くスーツケースだ。昨年から使い始め、海外遠征では大切な商売道具をこの〝ゴールドケース〟に入れて運ぶ。これまで衣装作りでも金をポイントで入れるなど、紀平は常に「金」を意識してきた。また、数字の「1」に関しても「もし空いていたらロッカーも1番とか番に入れますね」と意外な一面を明かす。

 先月には業界1位の世界的企業・トヨタ自動車に入社。今大会の目標はもちろん表彰台のトップだ。そして、その先にあるのは2022年北京五輪の金メダル。夢を成し遂げるまで、金のスーツケースは手離せない。