珍しいハプニングだ。フィギュアスケート女子の紀平梨花(18=N高東京)がエントリーしていない大会の出場者リストに記載され、日本スケート連盟をはじめファンも大混乱。紀平本人が出場を否定する事態にまで発展した。だが、これで次戦はまたも先送り。過去最高といわれる新プログラムは一体いつになったら見られるのか。ここにきて今季初戦&初お披露目が全日本選手権(12月、長野)となる可能性が高まってきた。

 騒動の始まりは26日の早朝だった。紀平が練習拠点とするスイスの国内大会「ロマンド杯」(30日開幕、ローザンヌ)の主催者は公式サイトで出場選手を発表。そこには男子の宇野昌磨(22=トヨタ自動車)、島田高志郎(19=木下グループ)とともに、紀平の名前が掲載されていた。

 この3人は新型コロナウイルス禍で中止となったグランプリ(GP)シリーズ第4戦・フランス杯(11月13~15日、グルノーブル)に出場予定だった。宇野、島田は実戦の機会を少しでも増やすべく出場するが、今季から新プログラム、新衣装で臨む紀平は振り付けの調整をするため、この大会にはエントリーしていなかったのだ。

 日本スケート連盟にも問い合わせが殺到し、関係者は大会サイドと事実関係を確認。情報が錯綜し、ネット上では「ケガで棄権したのか」と心配する声も。すると、紀平はツイッターで「私はこの大会にはもともとエントリーはしておりませんでしたが、何かの手違いで私の名前が入っていたようです。私も驚きました」と出場を否定。主催者側のミスと判明し、一件落着した。

 これによって紀平の今季初戦は完全に白紙。フランス杯が中止となったように、欧州の新型コロナウイルス感染拡大を鑑みると、紀平が欧州のローカル大会に出場するのは極めて困難だ。そもそもロマンド杯ですらも本当に開催できるか分からない情勢。そこで浮上するのがぶっつけ本番で全日本選手権へ“直行”することだ。

 これが意外にも好都合。今季からショートプログラム(SP)、フリーともに新プログラム、新衣装で臨むが、ブノワ・リショー氏(32)の振り付けによる新SPの一部を披露すると、これがファンに大好評。抜群の運動神経を存分に生かした片手側転というトリッキーな技も組み込まれ、すでに“神プログラム”とも呼ばれている。

 そんな待望の新プログラムを昨年初Vの全日本選手権で初披露となれば、ファンだけではなくスポンサー、テレビ局も万々歳。紀平自身にとっても、これ以上ない最高の今季初戦となるだろう。