ロシア初の冬季五輪となるソチ五輪がいよいよ2月7日に開幕する。ここにきてロシア南部は相次ぐ爆弾テロで大揺れ。「五輪は大丈夫なのか?」との不安が世界中で高まっている。そこで本紙はかつて「人類最強の男」として格闘界に君臨し、現在はロシアスポーツ省の参事官を務めるエメリヤーエンコ・ヒョードル氏(37)を緊急直撃。ウラジーミル・プーチン大統領(61)とも親密な「氷の皇帝」は、母国五輪の“安全宣言”を出すなど胸中を激白した。

 IGFの大みそか決戦「INOKI BOM―BA―YE2013」来場のため2年ぶりに来日したヒョードル氏は親交のあるアントニオ猪木参院議員(70)と握手を交わし、日本格闘界に健在ぶりをアピールした。一方、ロシアではスポーツ省参事官を務め、その存在感はソチ五輪に向けても高まっている。

 ヒョードル:オリンピックはロシアだけでなく、世界中の人々が待ち望む大きな大会ですけども、母国で開かれるということで、参加する選手の皆さん、お客さんの皆さんが喜んで、楽しんでオリンピックを観戦できるように心から願っています。

 だが、ここにきてソチ五輪は大きく揺れている。12月29、30日にロシア南部のボルゴグラードで連続爆弾テロが発生。合計34人が死亡し、100人以上が負傷した。プーチン大統領は1日にボルゴグラードを訪問し、治安当局にテロ対策の強化を指示。さらに3日にはメドベージェフ首相とともにソチ入りし、現地のスキー場で初滑りを披露。雪不足が心配されるソチの降雪量をアピールするとともに、治安に対する不安を拭おうと必死だ。五輪開催は大丈夫なのか?

 ヒョードル:日本では(テロ発生場所が)「ソチとすごい近い」という報道をされているかもしれないですけど、私のほう(自宅のあるスタールイ・オスコル市)から見るとかなり離れている場所にある。ソチのほうは安全な対策を取っていると思うので、大丈夫だと思います。最高レベルの安全対策を取るので問題ないです。

 その表情はわずかに険しくなったものの、言葉の一つひとつに力がこもった。ヒョードル氏はプーチン大統領と太いパイプを持ち、ロシアのスポーツ界の中枢を支える。それだけに、人類最強男からの“安全宣言”には説得力がある。とはいえ、イスラム武装勢力とされるテロリストたちは五輪期間中のテロも予告している。ヒョードル氏がソチに来てくれれば心強いが…。

 ヒョードル:もちろん、私もソチに行って観戦する予定です。アイスホッケーが好きなので、ホッケーの試合を見たいと思っています。

 そして、応援するのは地元ロシアの選手だけではない。2000年の初来日後、親日派として知られるヒョードル氏は日本勢の活躍も期待しているという。

 ヒョードル:1位はロシアの選手で、2位が日本の選手ならいいですけどね。フフフッ。冗談を言ってしまいましたが、日本は私の第2の故郷のような国で何度も来日して試合もしています。ですから、どんなスポーツでも日本人選手が活躍することは私にとってもうれしいことなので皆さん頑張ってほしい。いい結果が残せることを切に願っています。

 日本ではフィギュアスケートの浅田真央(23=中京大)とスキー・ジャンプの高梨沙羅(17=クラレ)が金メダル候補の筆頭だ。それでも、五輪は何が起こるか分からない。どんな時でも冷静沈着に難敵を退けてきた「氷の皇帝」は、極限の舞台で120%の力を発揮するための心構えを、2人にアドバイスする。

 ヒョードル:彼女(真央)は前のオリンピック(バンクーバー大会)では銀メダルでしたね。金メダルは確かキム・ヨナ(23、韓国)でした。オリンピックで金メダルを取るには「優勝したい」という強い気持ち、自分の故郷のことを思って、自分の故郷の皆さんに対して「やり遂げるぞ」っていう気持ち、あとは「勝ちたい」という強い気持ちを持つといいでしょう。

 技術や体力ではなく、メンタル面の大切さ。最後は気持ちの勝負になるというわけだ。真央、高梨にとっては現地の“最強男”からの頼もしいエール。ソチ五輪の会場でもヒョードル氏の熱いゲキが、日本勢の奮闘を後押ししそうだ。