復帰戦2位美姫に2大難問

2013年09月29日 11時00分

【ドイツ・オーベルストドルフ27日(日本時間28日)発】フィギュアスケートのネーベルホルン杯2日目、女子フリーが行われ、女児出産を経て約2年ぶりの復帰戦となった安藤美姫(25=新横浜プリンスクラブ)は103・07点で4位、ショートプログラム(SP)との合計162・86点で2位になった。技術点は48・07点で、SPに続き国際スケート連盟(ISU)がソチ五輪出場条件に定めた最低技術点(36点)を超え、ソチ五輪出場の第1関門を突破した。新たな一歩を踏み出した一方で、深刻な体力不足や周囲の完全アウェーぶりが露呈した。

 

 前日のSP滑走後「ほっとしました。これで前に進める。フリーは滑りきれるか分かりませんが、頑張ります」と自分に言い聞かせてこの日のフリーに臨んだ安藤。曲は思い入れのある「火の鳥」だ。赤と青に彩られた鮮やかな衣装を身にまといリンクに立つと、軽快な音楽に合わせ、演技を開始した。4種類の3回転ジャンプを決めたが、連続ジャンプが単発になったり、得意の3回転サルコーが2回転になる場面もあり、不安定さも見られた。


 後半に入ると、自ら不安を口にしていた体力不足がやはり露呈し始める。動きがスローになり、スピンでもぐらつきが見られた。演技を終えた後も、納得がいかないように首をかしげ、大きく息をつく。ISUが定める最低技術点は楽々上回ったものの、技術点、演技構成点ともに点が伸びず、フリーだけの得点では4位に沈んだ。


 激しい動きとともに4分間を滑る過酷なフリーでは、体力が何より必要だ。4月に女児を出産し、5月には練習を開始。産後で体形も変わったなか、試行錯誤しながら感覚を取り戻していった。「天才が本気で努力している」(フィギュアスケート関係者)と周囲も舌を巻くほど急ピッチで練習を積んできたが、さすがに時間が足りず万全とは程遠かった。


 このことは安藤自身も痛感しており「練習不足が目に見えて分かってしまった試合だった。すごくハードな挑戦なんだなと実感した」と反省。一方で「ただ、練習を重ねていけば、またトップの選手たちと戦えるようになると思う」と自分に言い聞かせるように話した。


 今大会でソチ五輪の出場資格をクリアしたことで、あとは国内選考を勝ち抜くだけとなった。勝負は五輪代表選考を兼ねる12月の全日本選手権。まずは予選となるブロック大会(10月の関東選手権、11月の東日本選手権)を通過する必要があるが、この日の出来ならさほど難しくはなさそうだ。問題は本選。国内の強豪に打ち勝つためには、SP、フリーと2本を揃えられる体力を取り戻すことが最優先で、さらにキレが戻りつつあるジャンプの精度も高める必要がある。


 また、国際舞台復帰と同時に、安藤を取り巻く環境が完全にアウェー化していることも難題だ。今大会の出場を果たした経緯をめぐり、他の選手とは異なる強引な戦い方に、世界のスケート界から厳しい目を向けられ始めているという。「今回、安藤選手が連盟の選手派遣ではなくテレビ局の力を借りて出場した話は世界中で広まっています。どの国も、基本的には選手派遣はその国の連盟が決めること。『それはおかしいのではないか』と疑問視していますよ」(ISUに詳しいフィギュアスケート関係者)


 当面、国際大会出場は予定されていないが、日本国内でも誰もケチをつけられない演技をしなければ高得点は望めないだろう。


 愛娘とともに奮闘する美姫ママ。逆境にも、元世界女王の意地を見せられるか。