絶妙な“カスタマイズ”がハマった! フィギュアスケートの四大陸選手権(韓国・ソウル)に臨んだ昨年チャンピオンの紀平梨花(17=関大KFSC)が女子ショートプログラム(SP)で堂々の首位発進を決め、男女通じて史上初の大会連覇へ大きく前進した。華麗な演技とともに目を引いたのは鮮やかなロイヤルブルーの衣装。実はコスチューム作製時から悩んだ末に「改良」を施していた。1ミリ、1グラムの違いが分かる天才的感覚が生み出した勝負服の秘密に迫った――。

 青い妖精が氷上で躍動した。SP18番滑走で登場した紀平はロイヤルブルーのSP用コスチュームに身を包み、冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を着氷。3回転フリップ―3回転トーループに続き、今季開幕直前に左足首をケガして回避してきた3回転ルッツも封印を解いて成功させるなど、すべてのジャンプをノーミスで揃えた。演技後は右手を高く上げて笑顔。「SPで80点を超えられてホッとした。フリーに向けてさらに気を引き締めたい」と充実の表情を見せた。

 この試合はフジテレビ系で生中継され、紀平の演技に魅了されたファンはSNSで「すてきな衣装!」「青が似合い過ぎる!」と絶賛。中にはトリプルアクセルの際にスカートがゴージャスにめくれ上がる姿に感嘆する声も出ていたが、実はそのスカートに秘密が隠されていた。

 紀平のSP用衣装といえば昨年のNHK杯、グランプリ(GP)ファイナル、全日本選手権で着用した真っ赤なコスチュームがなじみ深いが、今回は昨年10月のGP第2戦スケートカナダ以来の青バージョンを採用。昨年9月に本紙が作製現場に密着した際、軽量化を図ってスカートを裁断する可能性を報じたが、この日は実際にスカートの内側が大胆にカットされていた。

 人並み外れた繊細な感覚でジャンプを跳ぶ紀平は、飾り1つ分の重さすら気にするほど敏感。だが、国際スケート連盟の衣装に関する規定では「過度な露出を控えなければならない」と定められており、紀平は鏡を見ながら「スカートは1枚の方が軽くていいけど、スケスケで露出度が高くなるのは嫌だし…」と悩んだ。衣装メーカーの担当者と1時間以上も協議を重ねて調整が可能なようにスカートを2枚構造にすることで対応。その後、シーズン途中にハサミを入れる決断を下した。

 内側のスカートの前後を残し、両脇は斜めに切り込みを入れるラウンドカット。「カットした布の重さは10グラムにも満たない」(担当者)と、極限まで軽さを追求したのだ。これにより露出度を控えながらも軽量化に成功。完璧な演技の裏にプロのこだわりがあったのは言うまでもない。

 その一方で、胸元と背中が大きく開いたデザインも改良。肩が見えそうなほど露出が多かったため、紀平は練習中から肩口を気にするしぐさを繰り返していた。そこで布でくるんだベージュのゴムを背中に渡し、その上からストーンの飾りをつける工夫を施して、問題を解決した。

 これで青コスチュームを着たSP3試合はすべて1位。冒頭のトリプルアクセルもすべて成功している。執念で作り上げた勝負服で勢いをつけ、フリー(8日)で史上初の大会連覇を狙う。