【フィギュア】羽生 五輪V2プログラムに回帰の真意

2020年02月03日 16時40分

羽生はフリー曲「SEIMEI」で五輪2連覇を果たした

 これは逆襲のサインなのか。フィギュアスケート男子の羽生結弦(25=ANA)が6日開幕の四大陸選手権(韓国・ソウル)からショートプログラム(SP)、フリーともに五輪2連覇を達成した2018年平昌大会のプログラムに戻すことになった。羽生クラスのトップ選手がシーズン真っただ中で演目を変更するのは異例だ。果たして、その真意は――。

 国際スケート連盟公式サイトのプログラムが変更されたのは1日。羽生はこれまでSP曲「秋によせて」、フリー曲「Origin」を2季連続で使用していたが、サイトにはSPがショパンの「バラード第1番」、フリーは映画「陰陽師」の楽曲「SEIMEI」を記載。金メダルを獲得した平昌五輪への回帰が明記されていたのだ。

 予兆は2つあった。昨年11月のNHK杯では、SP当日の午前練習で4回転トーループを失敗し、終盤に「バラード第1番」を頭の中で流す“脳内再生”しサルコー、トーループを跳んだが、試合後に「オトナル(秋によせて)のサルコーとトーループがちょっとマンネリ化しているというか、自分の中でやり過ぎちゃうと本番で使えなくなると思ったので、いいイメージのある“バラ1”のサルコーと4回転―3回転(トーループ)をやって感覚良く終わろうと思いました」と解説した。また、逆転負けを喫した昨年12月の全日本選手権の翌日に行われたエキシビションでは「SEIMEI」を再現し、観客から喝采を浴びた。

 これを踏まえ、元国際審判員の杉田秀男氏(85)は技術、メンタルの両面からこう分析した。

「同じジャンプでも曲によって微妙に感覚が違う場合がある。特にサルコー、トーループはジャンプに入りやすいが、その分だけ体が開いて回転し過ぎる危険性がある。タイミングがズレやすいので、こういう時は自分がやりやすい曲で跳ぶのが一番いいんです」

 まさに前述のNHK杯での練習が当てはまる。一流にしか分からない感覚だろうが、最も大きいのはメンタルの部分だという。杉田氏は「フィギュアは音楽があってプログラムが成立する。曲がかかった瞬間に気持ちが高揚し、乗っていくことがあるんですよ。彼は常に新しいことにチャレンジし、完璧を目指す。より気持ちを入れて滑る意味で、金メダルを取ったプログラムを選択したのかもしれません」と指摘した。

 羽生は現行プログラムでは昨季の世界選手権、今季のグランプリファイナル、全日本選手権とすべて優勝を逃して2位だった。決断の裏には逆襲への強い意志があるのは明白だ。

 今シーズン開幕前、羽生は「SEIMEI」について「最初のポーズで、天と地と人とすべてつかさどっていると感じていた。リンクすべてを自分の支配圏に置くみたいな…」と語っていた。羽生伝説の次章は“金のプログラム”とともに新たな幕開けを目指す。