【フィギュア全日本】SP首位発進の紀平 初Vへの“武器”は梨花センサー

2019年12月20日 16時30分

ジャンプの失敗後も紀平はのびのびと演技した

“シンデレラガール”が磨き上げた感性とは――。フィギュアスケートの全日本選手権(東京・代々木競技場)で初優勝を狙う紀平梨花(17=関大KFSC)は女子ショートプログラム(SP)で73・98点をマークして首位発進もトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の失敗を猛省。しかし修正力こそが紀平の真骨頂。凡人には気付かぬ微妙な感覚を把握する“梨花センサー”は精度を増しており、失敗を糧に進化を続けている。

 失敗を栄養にするかのごとく、紀平が成長を続けている。それを感じさせる一幕が今大会に見られた。

 SPの第4グループ1番滑走で登場した紀平は、同グループ6人で行う6分間練習で完璧にトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳んだ。「理由が思いつかないくらい技術的に良かった」と自信満々で臨んだ本番では着氷時に体勢を崩して減点。その後はミスもなく首位発進したものの、試合後はほぼ未経験の1番滑走によるミスに悔しさをにじませた。

「調子が良かった分だけ(ジャンプミスが)悔しいです。息が上がって(体が)温まった状態でしたが、6分間練習を振り返る時間がないと感じた。最後の1分を残して、こういうふうに跳んだらミスが出ていたとか、確認し直す時間を6分間の中で設けないとなって感じました」

 演技後、いつものように素人には理解できないプロの感覚を丁寧に説明。その上で「1番滑走は今まで経験が少なかった。今回経験できた分、有利になると思う」と前を向いた。この自信は非凡な感性と修正力からくるものだ。昨季はスケート靴の微妙な感覚のズレが失敗につながったが、裏を返せばこの敏感さこそが紀平の武器と言える。

 以前、紀平はこんな話を教えてくれた。「ジュニアのころから悔しい失敗ばかり。そのたびに、もう絶対にミスしない!って気持ちで修正し、また失敗して…の繰り返し。そうやっていくうちに、感覚が備わっていきました」

 研ぎ澄まされた感性は生まれつきではない。スケートを始めた幼稚園、小学校時代はむしろ鈍感だったという。「小学3年の運動会のとき、知らずに片方だけお姉ちゃんの運動靴を履いて行ったんです。2センチくらい大きさが違って、なんか走りにくいなって思ったけどそのまま走っちゃった」

 スケート靴のミリ単位の調整に神経を削る現在では考えられない。今ではポニーテールを結ぶ位置が少しでもズレるとジャンプの精度が狂い、衣装のスカートの布一枚の重さにまでこだわるほどの変身ぶり。「小さいころはそうでもなかったけど、スケートで失敗を繰り返すたびにそう(敏感に)なっていっちゃった」と紀平は振り返る。

 努力で培った感性を生かし、名実ともに「女王」の称号を手にする。