【フィギュアNHK杯】紀平 ロシア勢台頭も泰然自若

2019年11月25日 16時30分

エキシビションで華麗な演技を見せた紀平

 昨年冬、シニアルーキーとしてフィギュアスケート界に衝撃を与えた紀平梨花(17=関大KFSC)が今、逆に「追う立場」となっている。グランプリ(GP)シリーズ第6戦NHK杯は2位に終わり、アリョーナ・コストルナヤ(16=ロシア)が優勝。これでGPシリーズ全6戦を今季デビューのロシア勢が完全制覇し、たった1年で勢力図が一変した。だが、本人は焦るどころか至って冷静。まるで「ウサギとカメ」のごとく、虎視眈々と長期逆襲プランを練っている。

 昨年冬、日本人13年ぶりのシニア1年目のGP制覇を成し遂げて大ブレーク。そこから1年、規格外のジャンプ力でシニアデビューを果たした“ロシア3人娘”が女子フィギュア界を席巻している。

 4回転4本を跳んで世界を震撼させたアレクサンドラ・トルソワ(15)、4回転ルッツ2発を決める鮮烈デビューを飾ったアンナ・シェルバコワ(15)、そしてNHK杯Vのコストルナヤ。この怪物ルーキー3人が勢揃いするGPファイナル(12月5日開幕、イタリア・トリノ)に、紀平は前年覇者として出場する。

 現状は誰の目から見ても紀平劣勢だ。今季すでにトルソワ、コストルナヤには直接対決で完敗。高難度のジャンプを跳ぶ3人に対し、紀平は公式戦で4回転を跳んだことがない。今季開幕直前に故障した左足首が完治していないとはいえ、目先の勝利にこだわるなら一日も早い4回転挑戦が必須。連日のように「4回転」の質問が飛ぶ中、ここまで焦らず泰然自若を貫けるのはなぜか? そこには逆襲への長期計画があるからだ。

 紀平の最大目標は2022年北京五輪の金メダル。NHK杯では「北京五輪で優勝という夢がある。優勝というのは誰にも負けられないということ。今から何が足りないかを考えないといけない」と口にした。すべては五輪を見据えた“逆算”。乱暴な言い方をすれば、今はロシア3人娘に負けていても構わない。3年後に勝てばいいだけの話だ。

 その勝算はある。元国際審判員の杉田秀男氏(84)が「ロシアの若い選手はまだ子供の体。これが大人の女性の体になると苦労する」と“フィギュア女子あるある”を語るように、シニアに上がって体が変化した途端に伸び悩むケースは散見される。今大会3位に終わり、3人娘に取って代わられた平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(17)を見れば一目瞭然だろう。

 トルソワは現在、身長155センチ。「毎年、身長は伸びているけど、ジャンプ力も伸びているので大丈夫」というが、体形の変化後は未知数だ。一方、154センチの紀平は「最近は測ってないですが、今はもうわずかしか伸びてないと思います」といい、身長の変化による4回転への影響は「関係はあると思います」と話した。

 体が完成した後に4回転を習得する紀平と、これから体が変化するロシア勢――。「急がば回れ」に徹する紀平が、3年後に3人をまくっている可能性は高い。