フィギュアスケートのアイスダンスで新カップルを結成した、2010年バンクーバー五輪銅メダリストの高橋大輔(33=関大KFSC)と平昌五輪アイスダンス代表の村元哉中(26=木下グループ)が30日、横浜市内で揃って取材に応じた。

 さながら結婚会見のような華やかさ。新カップルの2人は「大ちゃん」「かなちゃん」と呼び合い、時折、目を合わせてニッコリ笑う。7歳差の距離感は全くなく、敬語も一切使わない。2022年北京五輪を本気で目指す2人は、大勢の報道陣の前で早くも息ピッタリのやりとりを見せた。

 先頃、シングルからアイスダンスへの転向を発表した高橋。14年ソチ五輪を最後に引退し、昨季から現役に復帰して、昨年末の全日本選手権は5年ぶりに出場して2位。希代のシングルスケーターに対し、村元が「アイスダンスをやらない?」と持ち掛けたのは今年1月だった。もともとアイスダンスに興味があり「かなちゃんのファンだった」という高橋は「僕なんかでいいのか?」と戸惑ったという。それでも村元は「大ちゃんの音楽の捉え方、誰にもない個性、表現の仕方が好き。大ちゃんの世界と一緒に経験してみたい、一緒に滑りたい」と猛アタックし、カップル誕生に至った。

 今年7月、新潟のリンクで初めて一緒に滑ると、村元は「エッジのグッという深さ、今までにない感覚」と衝撃を受けた。滑り終えた高橋から「難しい」ではなく「楽しかった」という言葉を聞くと、自信は確信に変わった。「あの言葉がうれしくて、心に残っています」と振り返る。

 高橋は年内いっぱいでシングルを卒業。来年1月から米国・フロリダを拠点に、本格的にアイスダンスに打ち込む。

 高橋が「簡単にはいかないのは承知の上。お互いに同じ目標を持った方がいいものを作れる」と話せば、村元は「今後のアイスダンスの発展のため。目標は大きく持ちたい」と目を輝かせる。あうんの呼吸で目指す舞台は2022年北京五輪に定まった。

 だが、課題も山積だ。男性が女性を持ち上げる「リフト」が大きな壁になりそうだ。164センチの高橋が161センチの村元を持ち上げるのは難題だろう。「まずは肉体改造から。もしかして(来年は)バキバキになっているかも」と話す高橋に、村元は「私も極力絞って」と笑いつつ「逆リフトあるかも…」とポツリ。

 可能性が無限大に広がる異例の新カップル――。我々の想像を超える氷上のイリュージョンを体現してくれそうだ。