フィギュア世界選手権4位・紀平“危険な4回転挑戦”打倒ザギトワへ「来季から」明言も

2019年03月23日 16時30分

紀平は得意のトリプルアクセルで転倒。惜しくも表彰台に届かなかった

 新時代の幕開けに待った! フィギュアスケート世界選手権・女子フリー(22日、さいたまスーパーアリーナ)で、国際大会6連勝中の日本女子のエース、紀平梨花(16=関大KFSC)はショートプログラム(SP)7位から大逆転Vを狙ったが、4位に終わりメダルを逃した。だが早くも来季の巻き返しを誓い、すでに海外勢が取り組む「4回転ジャンプ」の習得を目指している。男子に続き女子も新ジャンプ時代へと加速する中、専門家からは“危険”と指摘する声も上がった。

 苦手のSPでまたも7位と出遅れた紀平は、得意のフリーで2つ目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を転倒した。これが響いて今季は1位を譲らなかったフリーで2位となり、表彰台には届かず。シニアデビュー後、グランプリ(GP)ファイナルを含む国際大会で無傷の6連勝と快進撃を続けてきたが、自ら「一番大事な大会」と位置づけた今大会でシニア最低の結果となった。

 最大のライバルでもある平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(16=ロシア)に優勝をさらわれた紀平は「悔しい思いもある」としながらも「何とか自分を信じてやった。また来シーズン頑張ろうという気持ちで迎えられる」と前向きに語った。早くも視線は「次」へ向かっている。

 打倒ザギトワのカギとなるのは、ずばり4回転ジャンプだ。この日、女子フィギュア界の歴史を変える出来事が起きた。フリー最後に登場したエリザベト・トゥルシンバエワ(19=カザフスタン)が国際スケート連盟公認大会ではシニア女子初の4回転ジャンプ(サルコー)を成功させたのだ。本人も「信じられない」と驚いた歴史的ジャンプを着氷すると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。ついに女子の4回転時代が到来した瞬間だった。

 女子の4回転といえば、昨年末のロシア選手権で優勝したアンナ・シェルバコワ(14)、2位のアレクサンドラ・トルソワ(14)のジュニア勢がともに4回転ルッツを成功。全日本選手権に出場中だった紀平は、そのニュースに大きな刺激を受けた。2人に触発され、今年1月には来季からの4回転挑戦を明言。実際に氷上の練習でも取り入れている。

 紀平には女子でほとんど使い手がいないトリプルアクセルという絶対的な武器がある。これに4回転が加われば鬼に金棒だが、元国際審判員でフィギュア解説者の杉田秀男氏(84)は「そんなに焦って4回転をやる必要はない」と警鐘を鳴らした。「僕は女子の4回転ジャンプは制限をつけるべきだと思っている。なぜならケガのリスクが高い。せっかく才能があってもケガをしたら元も子もない。紀平選手はまだ16歳だし、これからの選手ですから」

 女子に関しては、4回転ジャンプは“子供体形”のジュニアのほうが跳べる傾向にある。成人女性の体つきになるシニアになった途端、跳べなくなるケースが過去にもあった。「紀平選手は体幹が素晴らしいからその心配はないが…」(杉田氏)と言うものの、回転数が増えれば当然ながら故障の危険はアップする。

 大会前には、日本スケート連盟の伊東秀仁フィギュア委員長(57)も「やり過ぎると体が壊れる。それにフィギュアはジャンプの回数だけを争う競技じゃない。音楽と一体になった美しさ、一つの作品です」と本紙に持論を明かしていた。他にも“ジャンプ大会化”に苦言を呈す関係者は多く、それゆえ「出来栄え点重視」のルールになった経緯もある。

 紀平は敗戦の弁の最後に「今後は波のないシーズンを続けて(北京)五輪に行きたい」と述べた後に「絶対にケガをしないように…」と自らに言い聞かせた。最大目標の2022年北京五輪までまだ3年近くある。金メダルの期待がかかる紀平だからこそ、慎重さも必要ということだろう。