復活・羽生「ありがとう」秘話 LINEスタンプ大反響・ファンへの感謝とことん追求

2019年03月22日 16時30分

羽生が監修したLINEスタンプ

 氷上のプリンスが124日ぶりに帰ってきた。21日のフィギュアスケート世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)男子ショートプログラム(SP)で、右足首負傷から約4か月ぶりに復帰した五輪2連覇の羽生結弦(24=ANA)は冒頭の4回転ジャンプを失敗して3位発進。23日のフリーで大逆転優勝を狙うが、待ちわびた大観衆はその一挙手一投足に熱狂した。羽生も今回の復活ロードを歩む中で“ある思い”を示していたという。五輪王者の「ありがとう」エピソードを公開――。

 久々の演技を終えた羽生は開口一番、「悔しい気持ちでいっぱい」と冒頭の4回転サルコーが2回転となったミスを悔やんだ。「ゴチャゴチャといろんなことを考えすぎてしまった。そこは謙虚になったらいけない。もっと王者らしくいないとダメだなって思いました」

 今、自分が求められているものは何か。故障明けだろうが不調だろうが、常に金メダルだけを求められる宿命。その重圧を背負う覚悟を物語る言葉だ。しかし、羽生の圧倒的な存在感は、その強さだけで際立っているわけではない。練習後、試合後とファンへの感謝の気持ちを忘れず、この日は周囲への感謝の言葉を述べた。「いろんな人にサポートしてもらった。そういった方へ感謝しながら滑りたい」といい、フリーの演技で奮起を誓った。

 羽生が抱く「感謝」の思いは、復帰への道のりの中にもあった。7日から、LINEが「羽生結弦 3・11 SMILE スタンプ」を発売。売り上げ全額が日本財団の「災害復興支援特別基金」に寄付されるプロジェクトで、スタンプが発売当初から人気ランキング1位となり、今も大反響を呼んでいる。

 羽生はこのスタンプを猛練習の合間を縫って、自ら監修してきた。その期間が世界選手権へ向けて最も大事な1月下旬から2月下旬までというから驚く。その作業への向き合い方も、実に羽生らしい。写真と言葉の選定を細部までこだわり、原案から何度も繰り返し修正したという。LINE社の担当者は「とても忙しい中、ファンのためにこだわってやってらっしゃいました」と振り返る。

 中でも最もこだわり抜いたのが「ありがとう」のスタンプだ。スタンプは24種類1パッケージ(240円)のため、各シチュエーションで1つの図案が採用されるが、羽生は「ありがとう」だけで3種類のスタンプを提案した。その状況に最適な「感謝」の伝え方を徹底的に追求したという。

「最終的に1つに絞らせていただきましたが、日ごろからファンへの感謝があふれている羽生さんの姿勢は、こんなところにも表れるのだと感激しました」(同担当者)。実際のスタンプも、羽生が「ありがとうございました」と大声で叫んでいるかのような図案となった。

 先ごろ公表された、笹川スポーツ財団が昨年7~8月に18歳以上の男女を対象に実施した「好きなスポーツ選手」の調査では2位の米大リーグ・大谷翔平(24=エンゼルス)、3位のイチローを抑えてトップ。ファンの後押しが支えになっているのは事実だが、それに対する「感謝」の気持ちもパワーに変換しているところが羽生のスーパースターたるゆえんだろう。

 完璧な演技でSP首位に立った昨年覇者のネーサン・チェン(19=米国)とは12・53点差。大逆転Vへ、王者の心と体は整っている。