不敗神話は続くのか。フィギュアスケート全日本選手権初日(21日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)の女子ショートプログラム(SP)で、今季5戦5勝と負け知らずの紀平梨花(16=関大KFSC)は冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒し、68・75点と振るわず5位発進となった。V候補のニューヒロインがまさかの失速だが、本人はフリー(23日)での巻き返しに自信ありの様子。その裏には“神アイテム”があるからだ。

 前日から口にしていた靴の柔らかさの懸念が的中し、冒頭のトリプルアクセルで激しく転倒。予定したフリップ―トーループの2連続3回転ジャンプでは2つ目が2回転となった。だが、紀平に落胆の様子はない。「原因は分かっていて精神的な問題ではない。フリーでは自分の実力を出したい」と、SP5位からの大逆転Vを飾ったNHK杯の再現に自信を深めている。

 その裏づけとなる心強いアイテムがある。自らがデザインに携わった衣装だ。トップ選手は1シーズンごとに衣装を新調するのが通例で、紀平は今季からバレエ・ダンス用品の総合メーカー「チャコット」の衣装を着用している。9月のシニアデビュー戦「オンドレイ・ネペラ杯」で初めて袖を通すと、いきなり優勝。その後もGPファイナル制覇で国際大会4連続Vを飾るなど、この衣装を着た大会は5戦全勝で「V率10割」という驚異の勝率を誇る。そんな“神衣装”について、紀平は「すごく着心地がいい。それに、あんなにかわいく作ってくれてうれしい」と笑う。

 同社・心斎橋店でオーダーメードされた衣装は、曲調や振り付けに合わせて紀平本人もデザインした。SP用は柔らかい調べの「月の光」にちなんだかわいらしい水色ベース。「眠っている夢の中の少女」というテーマで、パジャマのような丸い襟も紀平が考案した。

 一方、フリーは激しい雷鳴から始まる曲「ビューティフル・ストーム」をモチーフにした稲妻が描かれ、これまでにない「大人のカッコ良さ」を追求した。このフリーの衣装では全5大会すべて1位(SPは今大会含め6戦中1位3回)で、2度も逆転優勝した実績がある。

 同店の衣装担当・瀬野麻衣さんによると「トリプルアクセルの軸や助走に影響しないように左右差をなくし、ジャンプを邪魔しないシンプルなデザイン」と機能性にもこだわっている。この“神衣装”にあやかろうと、今では複数の若手選手から「私も作りたい」と依頼が舞い込んでいるという。

 後輩のためにもフリーで逆転を果たし“不敗神話”を継続させたいところだ。