【カナダ・バンクーバー6日(日本時間7日)発】フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが開幕し、女子ショートプログラム(SP)で、今季シニアデビューの紀平梨花(16=関大KFSC)が世界最高得点となる82・51点で堂々の首位に立った。日本勢で2005年の浅田真央以来となるGPデビューシーズンでのファイナル制覇に王手をかけた。その裏には世界トップを狙うための「準備」と「計画」があった。  演技を終えた瞬間、自然と笑みがこぼれた。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させて流れに乗ると、最後まで完璧な滑りを披露。世界最高得点がはじき出された瞬間は両手で顔を覆う驚きのポーズを見せた。  最大のライバルとなる平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(16=ロシア)に4・58点の差をつける首位に「点数を見たときはビックリした。想像もしていない点数だった。フリーも自信を持って臨めると思う。ここで気を抜かずにいきたい」と真央以来、13年ぶりの偉業達成に向けて最高のスタートを切った。  シニア1年目とは思えぬ快進撃だが、ここまでの道のりにも“プロフェッショナル”な姿勢が隠されている。今年春に中学を卒業した紀平はフィギュアスケートに集中するため、通信制の私立N高校に進学。「インターネットですべての学校生活を送る」というコンセプトの新しい学校で、授業はもちろん、文化祭や運動会もすべてネットで実施される。遠征と移動が多い紀平が自分の生活スタイルに合った高校を探していた際に「全日制の学校と違い、自分のペースで授業を受けて単位を取れるメリット」(同校広報)に目をつけて申し込んだという。  4月の入学当初から主にスマホで課題を進め、あるときはタクシー移動中にも勉強した。担任の柴圭亮教諭(27)は「時間の使い方がとても上手。海外遠征や合宿の練習の合間などにコツコツと課題をこなしています。アイスショーに出た夜も勉強していました。目標を定め、それに向かって計画的に進める姿勢は、スケートだけでなく学習面でも感じますね」と目を丸くする。法令で義務付けられた年に5日間の対面型授業も「6割くらい完了しています」という。  小学校の文集に「NHK杯でたくさん花束をもらえる選手になりたい」と書き、先月に実現させた驚異の計画性――。真央以来のGPファイナル快挙は、すべて計算通りに進んでいるのかもしれない。