【フィギュア】新ヒロイン・紀平梨花の真の実力

2018年11月26日 16時30分

紀平がエキシビションに登場(ロイター)

 フィギュアスケート女子の紀平梨花(16=関大KFSC)が24日(日本時間25日)まで行われたグランプリ(GP)シリーズ第6戦のフランス杯で合計205・92点をマークして優勝した。日本勢初のGP初出場優勝を成し遂げた第4戦NHK杯に続く2連勝で、2005年の浅田真央らと並ぶGPデビューシーズンでのファイナル(12月6~8日、バンクーバー)進出も決定。真央との比較も尽きない新ヒロインの真の実力は――。

 NHK杯で初優勝を飾った紀平にとって、フランス杯は初めてとなる海外でのGPシリーズ。平常心を心掛けているとはいえ、16歳の心身のバランスは崩れかけていた。23日のショートプログラム(SP)では得意のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が1回転となり、まさかの無得点。フリー当日朝の公式練習では「完璧な状態」(紀平)だったが、本番直前の6分間練習で状態は急変した。「どうしよう。脚に力が入らない」。時差ボケの影響もあって、体が動かなくなった。

 フリー冒頭のトリプルアクセルは着氷こそしたが回転不足。その瞬間「自分の筋肉では精一杯」と悟り、2つ目のトリプルアクセルを跳ぶことを諦めた。難度を下げ、ダブルアクセル―3回転トーループに変更して成功。その後は3回転ルッツ―トーループの連続ジャンプで大幅な加点を引き出し、体の異変を感じさせない演技で表彰台の真ん中に立った。

 トリプルアクセルの使い手として、憧れの真央と比較されることが多くなったが、同じ16歳の時点での実力はどちらが上なのか。紀平を指導する浜田美栄コーチ(59)は「緊張の中でもできるようになり、少しお姉さんになったかな。ジャンプもスケートも全てを兼ね備えている。能力は高い」と称賛する。トリプルアクセルの成功率や確実性は当時の真央のほうが高かったが、ステップやスピンの技術は紀平が上と見る関係者も多い。

 紀平の能力の高さは、フリーで見せた「修正力」にあると言っていい。真央を幼少期に指導した山田満知子コーチ(75)は真央のシニアデビュー当時「この子はポンポンとジャンプを跳ぶけど、ミスし始めると跳べなくなることがあった」と話していたが、それは当時の真央が同じリズムでしか跳べなかったからだという。

 紀平の強みは冷静に自分の体調を把握し、できないことは即座に切り捨てられる判断力。演技のダウングレードにちゅうちょがないのは、ジュニア時代から練習や試合の反省点を携帯電話のメモ帳に書き留めてきた努力のたまもの。「積み重ねてきたことが身についてきた」という言葉には風格すら漂う。

 フランス杯では、復調途上とはいえ平昌五輪銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ(19)を抑えたが、金メダルのアリーナ・ザギトワ(16=ともにロシア)とは未対戦。シニアデビューでいきなりファイナルも制した真央に紀平が肩を並べるには高すぎるハードルだが「コンディションを整えれば実力も出せる」とフランス杯以上の演技に自信を見せる。新星の未来は限りなく明るい。