【NBA】「社会の模範」になるべく育つ選手たち

2020年03月30日 16時40分

スーパースターのジェームズは地元に学校を建てた(ロイター=USA TODAY Sports)

【KJ松井のCatch&Shoot】NBAは新型コロナウイルス感染拡大に伴って、12日からレギュラーシーズンの中断が続いている。試合がないことで本拠地アリーナで働くスタッフが収入減や失職の危機に見舞われている状況に、選手たちはいち早く寄付を申し出て救済に動いた(本紙既報)。米トップアスリートたちのこうした意識について、自身も高校、大学時代を米国で過ごした本紙バスケットボール評論のBリーグ京都ハンナリーズ、松井啓十郎(34)が解説する。

 NBAの中断が決まった直後、多くの選手がアリーナで働く人たちのために寄付を表明しました。選手はこうした人たちがいないと、試合ができないことがわかっています。でも試合がなくなるとお金(給料)が入ってこなくなるかもしれません。また今回は事情が事情ですから、開催されない試合の分の給料を支払わなくてもチームの責任ではありませんが、「裏方」の人たちの生活には影響が出ます。

 それが、選手が支払うことですべてが解決される。特にベテランが率先することで「あの選手はチーム全体のことを考えてくれている」と思われるようになり、それこそ皆で「ワンチーム」となるというわけです。

 NBAのトップ選手は普段からチャリティーや慈善活動を熱心に行っています。代表的なのはレブロン・ジェームズ(35=レイカーズ)。出身地のオハイオ州アクロンに学校を建設して、1000人を超える生徒に対して授業料だけではなく、食事も無料で提供しています。また、ステフィン・カリー(32=ウォリアーズ)もアフリカの子供たちに2万足のシューズを寄付したことがありました。

 NBAのトップ選手でも、子供の時は貧しくていい教育を受けられなかったりといった経験があると、自分が大金を手にした際にどうしたらいいのか、地元のコミュニティーにどうやって恩返しするかを考えるようになります。

 僕が通っていたコロンビア大学はハーレム(ニューヨーク)に近かったのでそこの子供たちと遊んだり、バスケットボールを教えてあげたりしたことがありました。病院に入院している子供たちにハロウィーンのお菓子を持っていったり、親を亡くした子供たちを大学の試合に招待したりといった活動もしていました。

 大学時代から「コミュニティーを良くしていこう」「スポーツ選手は子供たちに夢を与
える仕事」という意識を身につけているので、プロの世界でトップクラスになれば自然と「スポーツがうまいだけじゃなくて、社会のロールモデル(模範)になろう」と思うようになり、さまざまな慈善事業などを行うことで人間的にもランクアップするんです。

 僕自身も、Bリーグの残りシーズンの中止が決まりました。いつものオフならファン感謝デーなどをやるのですが、現状ではこうしたイベントはできそうもないので、試合を見に来られなかったファンの方たちにグッズをプレゼントしたり、何ができるかを考えています。

 ☆まつい・けいじゅうろう 1985年10月16日生まれ。東京都出身。バルセロナ五輪の「ドリームチーム」を見た父親の勧めで小学1年からバスケットを始め、6年時にはイベントでマイケル・ジョーダンと1対1で対戦した。高校から米国に渡り、コロンビア大学では日本人男子で初めてNCAA1部でプレー。卒業後は帰国し、今季から京都に加入。ニックネームの「KJ」は、米国で「けいじゅうろう」を覚えてもらいにくいために使い始めた。188センチ、83キロ。