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1986年センバツ4強「新湊旋風」の真実


気になるアノ人を追跡調査!!野球探偵の備忘録】今春センバツは大阪桐蔭(大阪)の連覇で幕を閉じたが、かつてそのセンバツで下馬評を覆す大番狂わせを幾度も演じ、大旋風を巻き起こした学校があった。1986年、富山県勢16年ぶりとなるセンバツでベスト4の好成績を残した「新湊旋風」のエース・酒井盛政が、プロに進んだライバルとの知られざる秘話を明かした。

「“弱小”富山のイメージを変えたいなんて、これっぽっちも思ってなかったですよ。ただ、クジを引いた瞬間、目の前でガッツポーズされたらね。これはさすがに黙ってられんな、何とか一泡吹かせてやろうと」

 前年の秋の県大会で4強、北信越大会でも準優勝の成績を収めた新湊は、春のセンバツ初出場の切符を手にする。県勢としてもセンバツ出場は16年ぶり、参考となる秋季大会のチーム打率は出場校中最低の2割9分1厘。抽選会で初戦の相手に決まった愛知・享栄ナインの喜びようが、酒井の闘志に火をつけた。とはいえ、享栄は後にドラフト1位で中日に入団、初登板の巨人戦でノーヒットノーランも達成した近藤真市(現中日投手コーチ)擁する優勝候補の大本命。周囲の下馬評は明らかだった。

「今みたいにビデオなんてほとんどなかった時代、偵察に行ったOBが『近藤? 全然大したことないよ』と言うから、そんなもんかと。後々聞いたら『本当はすごすぎて、ああ言うしかなかったんだ』と白状してました(笑い)。でもまあ、あれで相手に萎縮することもなく試合に臨めたのかな」

 小雨舞う春の甲子園で迎えた初戦、享栄ナインはぬかるんだ土に足を取られ、なかなか試合に入り込めない。一方の新湊は普段から雪中で練習を行っていたため、思う存分に実力を発揮。“地の利”をものにし、1―0で接戦を制した。続く2回戦はまたも優勝候補の一角、千葉・拓大紅陵。飯田哲也(ヤクルト)、佐藤幸彦(ロッテ)らを中心に、当時「東の横綱」と呼ばれた強豪相手に6回までに4点を先制され、苦しい展開を強いられる。「拓大紅陵は練習も見たんですが、バッピ(バッティングピッチャー)が僕より速い球を投げてた(笑い)。4点差もつけられて、監督が吹っ切れたんでしょうね。それまでは先頭が出たらバントでつなぐのがウチのセオリーだったんですが、開き直ってヒットエンドラン中心のサインになった」。この采配がズバリ的中。4点差をひっくり返し、7―4で準々決勝に駒を進めた。

 立て続けに強豪校を破り、新聞には「新湊旋風」の文字が躍った。準々決勝の京都西戦では地元の大応援団が甲子園に集結。1―1で迎えた延長14回、相手投手のボークで決勝点を入れ、劇的な幕切れで準決勝に駒を進めた。運も味方につけ、破竹の勢いで勝ち進んだ新湊だったが…。ここまでひとりで3試合を投げぬいた酒井の疲労はすでに限界。死力を出し尽くした後の準決勝、栃木・宇都宮南戦は3―8で完敗した。

「享栄戦の試合後、宿舎に電話がかかってきたんです。出ると近藤で『頑張れよ。俺らに勝ったんだから、簡単に負けんじゃねえぞ』って。マンガみたいな話ですよね。今でもよく連絡を取ってるんですが、あいつ、プロでの自分の活躍をビデオに編集してて、会うたびにそれを見せてくるんですよ。ノーヒットノーランなんて何度見せられたか。高校野球編はないくせにね(笑い)」

 高校卒業後は地元富山の運送会社に入社。硬式、軟式合わせ20年余りプレーを続けた。今では野球に携わることはなくなったが、地元に対する思いは年々強くなっているという。

「自分たちの活躍がまだ話題に出てくるのが寂しくもある。いつまでベスト4の話をしてるんだとね。あれからもう30年もたってしまった。早く優勝でも準優勝でもして、抜かしてほしいですね。だって“旋風”でベスト4って、微妙じゃないですか(笑い)」
 今春、県勢としては富山商が6年ぶりに出場したが初戦(2回戦)で敗退。かつて甲子園に旋風を巻き起こした男は、雪深い北陸の地から県勢の活躍を願ってやまない。

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