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「イチローの後釜」元オリックス高見沢考史さん


子供たちに打撃指導する高見沢さん

【異業種で輝く元プロ野球選手】

「イチローの後釜」として期待された選手が今、新たな舞台で野球の裾野拡大に寄与している。元オリックスの高見沢考史さん(42)。現在、埼玉県内のバッティングセンター「アーデルバッティングドーム」を経営しながら野球の楽しさを伝えている。

「バッティングセンターというと昭和のイメージがあるかもしれませんが、元プロ野球選手が指導している野球塾も併設しているので。昔のイメージとは少し違うかもしれませんね」(高見沢さん)

 2000年ドラフト6位で社会人の名門・東京ガスからプロ入り。50メートル6秒台前半の俊足を武器に、1年目から一軍公式戦に出場。プロ2年目の02年には62試合で打率2割7分9厘を残すなど、一時は01年にメジャー入りしたイチローに代わる俊足巧打の外野手として将来を嘱望された。

 だが、その後は故障に悩まされ、03年オフに戦力外に。そんな高見沢さんが現在の仕事に出会うきっかけは一枚の「折り込みチラシ」だった。
「オリックスをクビになった後も東京ガスの練習生としてプロ復帰を目指したのですが、04年にヘルニアを患い、手術を余儀なくされました。『これでもうプロには戻れない』。そう思っていた時に妻がたまたま『バッティングセンターの店長募集』というチラシを見つけてきまして。これなら野球に携わっていけると思い応募しました。元プロ選手という肩書もあってか一発合格し、面接翌日から社員として採用してもらったんです」

 バッティングセンターの店長――。当初の印象は「受付に座ってお客さんに対応する」。軽い気持ちでの船出も、実際は想像以上の仕事だった。

 午前10時の開店に合わせ場内の掃除。常時稼働する投球マシンのメンテナンスも日々欠かせない。営業時間中は受付での接客に加え、売り上げの計算。午後5時過ぎから場内で行う野球塾での指導も一人で請け負った。入社当初の05年ごろは午前3時まで営業していたこともあり、帰宅するのは早朝が当たり前。休日も週1日あるかないかの過酷な日々が2年以上続いた。

 それでも、「辞めたい」とは思わなかった。

「肉体的には相当きつかったのですが、やはり元野球選手。自分の技術、経験を子供や大人に伝える仕事は楽しいし、やりがいもある。今もその気持ちは変わらないです」
 真面目な勤務態度は店舗の売り上げにも直結した。入社当初は低迷気味だった集客も高見沢さんの熱意ある指導や人当たりの良い接客のかいあって徐々に回復。08年にオーナーからバッティングセンターの経営権を買収後は、元プロ野球選手を雇用するなどしてビジネスを拡大している。現在、同センター経営の他に埼玉、千葉、東京で野球塾を開催。生徒数はおよそ500人に上る。今後は日本各地のバッティングセンター買収にも意欲を燃やす。

「確か10~15年ぐらい前は全国にバッティングセンターが1500か所近くあったそうですが、現在はその3分の1の500か所程度といわれています。でも、やり方次第で経営はできる。だからこそ、この事業を広げていきたいのです。当面の目標は今一緒に働いてくれている5人の元プロ野球選手が各地でバッティングセンターを持つこと。そうすれば野球人口の減少に歯止めをかけることができるかもしれない。バッティングセンターを通じて、そういう活動をしていきたい」

 笑顔を絶やさずこう話す高見沢さん。短命に終わった現役生活を糧に、野球への思いを次世代につなぐ。

 たかみざわ・こうじ 1975年、群馬県生まれ。前橋工高から東京ガスを経て2000年ドラフト6位でオリックス入団。プロ1年目から一軍6試合に出場も、03年オフに戦力外通告。04年10月から店長として埼玉県内の「アーデルバッティングドーム」に勤務。08年に経営権を買い取り代表取締役に就任。プロ通算成績は68試合、打率2割6分9厘、4本塁打、26打点。右投げ左打ち。家族は由美子夫人と1男1女。

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