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勝利のガッツポーズ一転”世紀のエラー” 島根開星・ジャイアン白根は何を思った?


白根尚貴

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(51)】2015年オフ、ソフトバンクからの育成契約を蹴り、トライアウトを経てDeNAに入団した白根尚貴外野手(24)。新天地では念願の出場機会に恵まれ、今季はプロ6年目にして待望の初本塁打も放ったが、白根が初めて世間の注目を浴びた場所はプロの舞台ではなかった。10年夏、開星(島根)の2年生エースとして甲子園のマウンドに立ち、その風貌から「山陰のジャイアン」と呼ばれた男が“世紀のエラー”と呼ばれた悲劇の試合を振り返った。

「ただ“勝った”と思った。それだけです」

 その年、エース白根を擁した開星は春夏連続で甲子園に出場。春は向陽(和歌山)との初戦に惜敗するも、島根県内ではすでに敵なしの強豪校となっていた。
「県内はもちろん、全国でも負ける気はしなかった。バッティングがいいチームで、守備も堅かったんですよ。エラーなんてめったにしないチームだった。それがたまたま、あの大舞台で出てしまっただけで」

 迎えた夏の甲子園初戦、開星は仙台育英(宮城)を相手に試合を優位に進める。9回二死走者なしで5―3。あとアウトひとつ。勝利は目前に迫っていた。だが、仙台育英も食い下がる。2本の安打に失策が絡み、1点差でなおも満塁。それでも続く2番打者を詰まらせ、平凡な中飛に…。勝負は決したかに見えた。

 白根は打球から視線を外し、マウンドでこぶしを掲げた。その次の瞬間を、見てはいなかった。そして…。

「そのあとのことは、もうはっきりと覚えていないんです」

 中堅手の落球で2者が生還し、まさかの逆転。その裏、二死一、二塁から現阪神・糸原健斗の大飛球で同点かと思われたが、これを相手のファインプレーに阻まれゲームセット。象徴的な幕切れからも、この試合は“世紀のエラー”として高校野球ファンの記憶に深く刻まれた。

「あのときガッツポーズをしなければ、と言われることはあります。確かに、ガッツポーズをしなければここまで映像が残ることはなかったかもしれない。でも、高校生だし、試合中は感情が出るもの。ガッツポーズしなければ落球がなかったのなら、そりゃあしませんけど、それとあのプレーは関係がないし、タラレバを言い始めたらキリがないですから」

 翌年の夏、3年生となった白根は再び甲子園に戻ってきた。だが、2回戦で優勝校の日大三(西東京)に8―11で敗退。「4安打しましたけど、自分一人の技術ではどうすることもできなかった。でも、今度はガッツポーズは控えるようにしたんですよ」と笑う。月日は流れ、プロの世界に身をおく今、高校時代のチームメートと連絡を取り合うことはほとんどないという。

 それでもいまだに当時のことが話題となることについて、白根はこう言葉を並べた。
「自分がプロで活躍して、あのときのことを塗り替えようとも思ってない。自分が(エラーをした)張本人ではないので、僕の活躍で記憶が薄れるわけではないですし、むしろまた、あの試合が取り上げられることが出てくるじゃないですか。だからただ、ひとつの思い出として、ずっと残っていていいと思うんですよ。誰かに覚えていてもらえることが、一番ありがたいことですから」

 高校野球史に残る“世紀のエラー”から8年。あのころからは見違えるほどスリムになり、面影も薄れた山陰のジャイアンは、さっぱりとした表情で遠い記憶を懐かしんだ。

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