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甲子園マウンドで捕手が投手にキス!前代未聞シーンの主役が珍行動の真意激白


【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(48)】日本高野連は19日に大阪市内で選抜高校野球大会の運営委員会を開き、来春の第90回記念大会からタイブレーク制を導入することを決めた。選抜で思い出されるのは、2008年の第80回大会で起こった球史に残る「珍事件」だ。智弁和歌山(和歌山)と宇治山田商(三重)の3回戦。1―1で迎えた8回二死三塁のピンチに智弁和歌山の捕手がマウンドの投手に歩み寄り、なんと左頬にキス…。賛否両論が巻き起こった。前代未聞のシーンの主役となった元捕手の森本祥太氏(27)が当時を振り返った。

 ベスト8がかかったマウンドで2番手投手・林孝至がピンチを迎えていた。駆け寄って緊張をほぐす言葉をかけるのは捕手として当然のこと。しかし、この時の森本氏は大観衆の見守る前で驚きの行動に出た。「ピンチになったら投手は自分を追い込むし、焦るじゃないですか。でもお尻を叩いたり、みんなと同じことやってもね。それでチューをしたんです。あいつ、思わず拭いてましたけどね。そのあと抑えてよかった」

 普段から林とは仲がよく、林の「緊張しい」の性格をよく知っていた。「1つ下の岡田俊哉(現中日)は負けん気の強い投手の性格で、僕が何か言って聞くようなタイプでもない。林はみんなに合わせて頑張るタイプだった。いろんなことを林とは話してきたし、僕にとって特別な感じがあった。あいつには打たれてほしくなかったんです」

“伏線”は選抜出場がかかった07年秋の近畿大会。天理(奈良)との準々決勝で、劣勢の展開から2番手としてマウンドに上がった林に「もう点取られないぞ」と初めてチュー。林はキス効果?でチームを逆転勝利に導く好投を見せ、2人で「甲子園でもやったろか」「やってくるやろ」と冗談ぽく話していたという。「空気をなごましたかった。あいつの中では俺のキスがおまじないみたいになっていた。練習中も誰にもやったこともなかったです」

 そして、大舞台でもおまじないを披露した。その瞬間は「誰も気づいてないだろう」と思っていたが、試合後に大騒ぎに…。テレビ視聴者から苦情電話が殺到し、マスコミも大きく報道。事態を重く見た高野連は学校側に「あんな行為はやめるよう」厳重注意し、森本氏の耳にも入った。「別にええやん、と思っていた。まだ高校生だったし、そんなやばいことなんかな、くらい。捕手としての気遣いでやったことだし。ネットで騒ぎになっているのも見ました。2ちゃんねるで『男好き』とか出ていたけど、俺、女の子好きやし」と、さして気にはしなかった。

 そんな中、高嶋仁監督からは「そんなもん、ベンチの裏でやったらええやろう」とひと言…。その時は「ベンチの裏は逆にやばいやろう」と内心笑ってしまったという。とはいえ、さすがに以降の試合では“封印”。夏の大会でも学校側の忠告で一切キスについてマスコミにも口を開かないようにした。

 卒業後、森本氏は奈良産業大学に進学。1年秋にメンバー入りしてから近畿学生野球の春季、秋季リーグ合わせて6度のV。2度のMVPに輝くなど大活躍を見せた。「でもプロに行きたいとかはなくて、ずっと消防士になりたかった。公務員になりたかった」。在学中から公務員試験に向けて猛勉強。晴れて合格し、地元の湯浅町役場の職員になった。同時に和歌山の企業「森自動車」の軟式野球部に所属。オール和歌山に選出されて国体にも出場した。今春から教育委員会でスポーツ振興に携わり、多忙な日々を送る。

 衝撃のシーンから9年たった今でも「魔法のキス見たよ」「甲子園でチューした人でしょ」と声を掛けられることがある。「僕にとっては誇りですよ。覚えてくれているのがうれしい。あれでしか目立っていないですから。こういうやつがいたな、と思ってくれたらうれしい。飲み会でキスして~と言われることもありますよ(笑い)」。林はもちろん、当時のメンバーとは毎年、年末に地元に集合し、盛り上がるという。甲子園でユニークな「爪痕」を残した球児の名はこれからも語り継がれるはずだ。

【球史に残る“名?迷?場面”】

 08年の選抜大会の3回戦で智弁和歌山は宇治山田商と対戦。先発の岡田(現中日)は6回途中を1失点に抑えて2番手の林に交代した。智弁和歌山は8回に主将・勝谷の適時打で1―1の同点に追いつくが、その裏に林が二死三塁のピンチを招く。

 ここで捕手の森本はマウンドに駆け寄り、緊張をほぐすために林の背中に手を回し、左頬にキス。林は苦笑いして左頬を手で拭うと後続を断ち、ピンチを切り抜けた。試合は延長戦に突入。11回表一死二塁から高橋が左翼線へ勝ち越し打(高橋は二塁ベースに到達したが、一塁ベースを踏み忘れたためアウトとなり、記録は左翼ゴロ)を放ち、智弁和歌山が2―1で接戦を制した。

 試合後に「マウンドでのキス」を憂慮した高野連は学校側に注意。マスコミも大きく報じ、ネットでも賛否両論が巻き起こった。現在も「魔法のキス」「球児の純愛物語」などと話題に上り、高校野球史に残る名(迷?)場面として語り継がれている。

 08年春の智弁和歌山は準々決勝で東洋大姫路(兵庫)に0―2で敗退。同年夏も出場したが、同じく準々決勝で常葉菊川(静岡)に敗れた。

【プロフィル】もりもと・しょうた 1990年7月23日、和歌山県有田川町生まれ。名門・智弁和歌山の捕手として3度、甲子園に出場。3年時には後輩に中日・岡田、日本ハム・西川がいた。卒業後は奈良産業大(現奈良学園大)に進学。4番として活躍し、4年間で近畿学生野球リーグの春季、秋季合わせて6度の優勝に貢献、2度のMVPに輝いた。卒業後は公務員試験に合格し、和歌山・湯浅町役場に勤務。企画担当を経て今春から教育委員会に配属され、スポーツイベントの運営や施設管理に当たる。役場職員でありながら森自動車の軟式野球部に所属。3女の父。

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