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ゴジラ松井の他にもいた!名将・馬淵監督に5打席“敬遠”された男


黙々とバットを振る法兼駿

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(45)】星稜・松井秀喜、明徳義塾・馬淵史郎監督の名を一躍全国区にした1992年夏の甲子園での5打席連続敬遠。高校野球史上最大の騒動から20年後の2012年、知将・馬淵監督が勝負を避けたもう一人の打者がいた。現在は社会人野球・パナソニックでプロ入りを目指す法兼駿内野手(22)が宿敵・明徳義塾との因縁と、高校最後の試合で味わった5四球を振り返った。

 

「中学のころから明徳中との試合では打ってて“明徳キラー”なんて呼ばれていて。でも、中学最後の大会では高知中に完敗。当時の高知中は四国では一番強いチームで、こいつらと一緒に甲子園を目指したいと思ったのが高知高に進学した理由です。一方の明徳は県外の子が多くて甲子園に行くには避けて通れない相手。当時から意識はしていました」

 

 地元香川を離れ、高知高校に進学した法兼はメキメキと頭角を現し、2年秋には4番・主将として四国大会に進む。翌年のセンバツ出場をかけた大一番、準決勝の明徳義塾戦では9回に勝ち越しの3ラン。宿敵を下し、センバツ切符を手にした。「ずっと4番だったのでそれなりにマークされてるなと感じることはあったけど、それまでは敬遠されるほどではなかった。今思えばあの試合から勝負は始まっていたのかもしれません」

 

「一瞬すぎて覚えてない」と語るセンバツでは現中日の柳裕也擁する横浜の前に初戦敗退。目標を甲子園出場から甲子園勝利に切り替え、夏の高知大会決勝に進んだ高知高だが、その夏の知将・馬淵監督は法兼封じに本気だった。「勝負どころで敬遠が来るだろうというのは元からわかっていたこと。だからウチの監督も普段5番を打ってた(1学年下で現巨人の)和田恋を3番に、当たってる芝を5番に回したりと対策もした。お互いに敬遠は意識してたんです。ただ、あそこまでとは思わなかった」

 

 法兼に対して明徳バッテリーは徹底してアウトコースギリギリを突いてきた。1打席目はフルカウントから四球。第2打席はカウント2―1から左飛に倒れたが、その後はストライクゾーンに来ることはなく、3、4打席目はいずれもストレートの四球。試合は1―1で延長戦に突入し、10回の5打席目、二死二塁の場面では捕手が立ち上がって敬遠。「10回は一塁が空いてて、これは仕方ないと思ったんですが、12回の6打席目は一塁ランナーを進めてまで敬遠できた。ここまでするのかと」。結局、延長12回1―2でサヨナラ負け。スタンドから「またか」「勝負しろ」とのやじが響くなか、法兼の高校最後の試合は5四球で幕を閉じた。

 

 馬淵監督から真意を聞いたのは、その試合から1週間後、明徳義塾の甲子園出場壮行会の折だった。「高知では敗れた学校が代表校に応援メッセージをしに行くんです。僕らのセンバツのときは明徳の主将が来てくれたし、特別なことではないんですが、やっぱりあまり行きたくはなかったですね。自分は『決勝で見せた粘り強さを甲子園でも見せてください』と皮肉っぽく話したはず。けっこうウケたと思いますよ(笑い)」

 

 その帰り、馬淵監督に呼び止められ「敬遠して申し訳なかった。でも、君にそれだけの力があるということ。大学でも必ず通用する」と激励を受けた。明徳義塾の捕手だった杉原、遊撃手の今里とは大学野球で交流を深め、今も連絡を取り合う仲。決勝で5番を打った芝が2安打と結果を残したこともあり「しこりは全くありません」と笑顔であの夏を振り返る。

 

 大学時代は腰、肩と故障を経験し、野球を諦めようと思ったこともあるというが「ああいう試合は誰でも経験できることではない。松井さんと同じような経験ができたことが自信になって今でも野球を続けられている部分はあります」。今はプロ入りを目指し、社会人野球で練習を続ける日々だ。

 

「都市対抗の予選でも2度ほど敬遠はありましたけど、できるだけ敬遠はしてほしくないですね(笑い)。いい作戦かどうかは結果論で、ギャンブルみたいなもの。そういう意味でも馬淵監督はすごい勝負師だなと思います。今だから本人に聞いてみたいこと? 自分をどのくらいのレベルだと思ってたのかは聞いてみたいですね。自分では敬遠されるような選手だとは思ってなかった。当然、松井さんのようなレベルだとは思わないので」

 

 名将が勝負を避けたもう一人のスラッガーは、その答えを探し、今日もバットを振る。

 

【賛否湧き起こった92年の5打席連続敬遠】1992年夏の甲子園2回戦で馬淵史郎監督率いる明徳義塾(高知)は星稜(石川)の4番・松井秀喜を5打席連続で敬遠し、松井は一度もバットを振ることなく星稜が敗退。怒った観客によりグラウンドにメガホンが投げ込まれるなど試合途中から球場は騒然とした。試合後も明徳の宿舎に抗議や嫌がらせの電話が相次ぎ、馬淵監督や選手たちの身を守るために、警察官やパトカーが出動する騒ぎになった。この騒動をきっかけに、高校野球における敬遠策の賛否、「勝利至上主義」についての議論が湧き起こった。

 

【プロフィル】のりかね・しゅん 1994年12月7日生まれ、香川県丸亀市出身。飯山北小1年のとき、軟式野球チーム「飯山少年野球クラブ」で野球を始める。飯山中では軟式野球部に所属、2年秋、3年春に四国大会準V。高知高進学後は1年夏からレギュラー、3年春に甲子園出場。亜大では3年秋に東都リーグ首位打者、ベストナインを獲得し、明治神宮大会優勝。4年春にベストナイン。大学卒業後は社会人野球のパナソニックで野球を続ける。高校通算40本塁打。173センチ、81キロ。内野手。右投げ左打ち。

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