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中村ノリ育ての親が語る「野球留学」「高校野球」の在り方


ナインの練習を見守る中尾ヘッドコーチ

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(44)】かつて部員全員が県外出身者のチームとして、甲子園に賛否両論を巻き起こした四国学院大学香川西(当時は香川西)。春夏通算5度の甲子園出場を誇りながら、近年は甲子園から遠ざかっている同校のヘッドコーチに元広島などで活躍した中尾明生(64)が昨春、就任した。近鉄コーチ時代には若き日の中村紀洋を二人三脚で鍛え上げた名伯楽は高校野球の在り方について何を思うのか。

「高校野球の指導者を引き受けたのは、選手時代から付き合いのある知人に頼み込まれたから。もともと高校野球にはそんなに興味がなかったんです。正直、自分はプロで教えているほうが楽しい。高校生に教えるのは、プロよりずっと難しくて大変ですから」

 昨春、四国学院大学香川西のヘッドコーチに就任。かつては100人近い部員数を誇り、甲子園にも手の届く強豪だった野球部だが、中尾が赴任した年の3年生はわずか3人だったという。

「2年生主体のチームでね。代が替わって、今年は全体で40人ちょっと。香川の子は今は2人。野球人口も年々減っていて、地元の子にはもっと入ってきてほしいんですが、野球留学で一時期強くて今はそこまで強いわけでもない。こう言っちゃあなんですが、あんまり人気がないんでしょう」

 野球留学といえば、15歳で親元を離れ、故郷から遠く離れた地での集団生活。身の回りのことはすべて自分でこなさなければならない。さぞや覚悟がいるかと思えば、そんなことはないと中尾は言う。

「本人が望んで来てるんだから、大した問題じゃないですよ。どこでやろうが、やることは一緒。入ったら県内も県外も関係ありません。それよりも、そこまでして来たのに、ちょっとケガをしたから休みます、風邪ひいたから休みますというのがね。時代じゃないと言われるかもしれないが、俺らのころはキツいと思うことも何も苦じゃなかった。それでも、せっかく来たんだから『どうせ3年で辞めますから』とは絶対に言わせない。それを言われたら俺の負けです」

 高校生を相手に指導する上で大事にしていることは、あくまで本人たちの意思を尊重することだ。その理由を中尾はこう説明する。

「プロは野球が好きな子、うまい子の集団で、それに磨きをかけるだけの話。高校生は一人ひとりで能力も違えば目標も違う。高校で辞める子もいれば、続けたい子、プロに行きたい子もいる。なかにはたかがクラブ活動と思っている子もいるでしょう。気持ちだけでなく、体力面でもそう。みんなが上でやれる選手ばかりじゃないけど、できないからといって辞めろとは言えない。プロでは一生懸命やらしてダメなら辞めさせることも仕事でしたが、高校生は我慢強く待ってやらなきゃいけない」

 近鉄コーチ時代には、中村紀洋をつきっきりの指導で一流選手に育て上げた。その中村が今春、浜松開誠館(静岡)の臨時コーチに就任。プロの世界で出会った愛弟子がくしくもアマチュアの現場で同じ境遇に立った。

「ノリに関しては、もとからコーチと選手というよりは『仲間』のような感じだったな。あいつも野球が好きで、離れられんのやろね。指導者としての適性? 熱心なコーチになると思いますよ、いろんな意味でね(笑い)」

 中村と甲子園で対戦することが目標かと尋ねると、中尾はこう言ってかぶりを振った。

「甲子園での対戦は見果てぬ夢でしょう。そりゃ、高校野球の指導者をしているからには甲子園には出たいし、地元の子を増やすにも甲子園出場が一番の近道です。でも、勝利ばかりに固執したら選手も自分もやりづらくなる。ぶっちゃけた話、今のチームには俺より野球が好きな子がいないんです。だから、とにかくこの子らを野球に夢中にさせることが今の目標。三度のメシより野球が好きな集団にしたい。だって、ノリがそうでしたから」

 野球留学と教育の両立。孫ほども年の離れた教え子たちに戸惑いながら、中尾はその可能性を模索している。

<四国学院大学香川西>香川県三豊市にある私立高校。1951年に三豊家政専門学校として開校し、60年に上戸学園、87年に香川西に校名変更。2011年に四国学院大学の協定校になり、16年から四国学院大学香川西となった。野球部は香川西時代に夏4回(03、06、08、12年)、春1回(11年)甲子園に出場(最高成績は2回戦から登場し、1勝して3回戦に進出した06年夏。それ以外は初戦敗退)。いずれもベンチ入りメンバー18人全員が県外出身者で話題になった。ちなみに12年夏は18人に四国出身もゼロ。06年は部員83人全員、11年は部員70人全員が県外出身だった。

☆なかお・あきお=1952年11月7日生まれ、愛媛県出身。御荘中入学後、軟式野球部で野球を始める。南宇和高、拓殖大を経て、74年のドラフト外で広島に入団。83年に南海に移籍。88年に現役を引退。その後、ダイエー、近鉄とコーチを歴任。近鉄コーチ時代には若き日の中村紀洋を育てた。楽天スカウト、NOMOベースボールクラブのコーチを経て、2016年から香川西のヘッドコーチとして指導にあたる。166センチ、72キロ。右投げ右打ち。

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