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“好きなことを仕事に”元日本ハム・糸数さん 開業3年目で人気ダイビング店に


異業種で輝く元プロ野球選手

 

自身の店の前でボンベを手に笑顔の糸数さん

【糸数敬作(元日本ハム投手)】好きなことを仕事にする。誰もが憧れる生き方を生まれ故郷で実現している元プロ野球投手がいる。現在、沖縄・読谷村でダイビング店「Diving20」を営む糸数敬作さん(32)だ。2006年の大学生・社会人ドラフト3巡目で亜細亜大から日本ハム入り。09年から主に先発、中継ぎとして活躍したが、11年の右ヒジ手術後から徐々に低迷。13年に戦力外通告を言い渡された。そんな糸数さんが現職に至るきっかけは趣味の「釣り」だった。

 

「沖縄出身ということもあり、もともと釣り好きだったのですが、現役時代の10年1月に義兄から『魚が釣り餌をどう食べるか水中から見たくない?』とダイビングに誘われまして。その時、興味本位で初めて海に潜ったら、透き通る海に衝撃を受けました。当時はダイビングというと自分の中では夏のイメージしかなかったのですが、実際にダイバーに話を聞くと、夏以外でも年間を通して需要はあるし仕事にもなる、と。それなら引退後はダイビングに携わろうと思い続けていました」

 

 クビを宣告された直後の13年12月にはすでに4女の父だった糸数さん。当初は家族の生活もあり、妻・明希乃さん(32)を筆頭に周囲からダイビング店経営を大反対された。

 

「大学時代に教員免許(公民)を取得したことや、日本ハムから球団職員としての誘いもあったので安定した職に就いた方がいいと言われ続けました。でも、球界への未練はなかったですし、何より自分のやりたいことをやる方が人生は楽しい。だから、妻には失敗したら力仕事でも何でもやって稼ぐからと懇願して、翌年1月末から知人の店で修業をさせてもらうことにしたのです」

 

 自らのダイビング免許取得に加えショップ経営のノウハウ。無給で飛び込んだ異業種は想像以上に過酷だった。

 

 午前4時過ぎに起床すると、自らおにぎりを握り自宅から仕事場である沖縄屈指のダイビングスポット「真栄田岬」へ“出勤”。午前7時過ぎから午後7時までの約12時間、入れ替わり訪れる客とともに陸と海の往復を繰り返した。

 

 最盛期の夏場ともなれば1日に5度も海に潜ることも珍しくなかった。休日は「台風接近」による悪天候日のみ。食事もままならない生活が続いたこともあり、引退直後に95キロあった体重は8か月間で74キロにまで激減した。それでも「自分の店を早く持ちたい」。その一心で働き続けた結果、インストラクター免許を取得後の14年10月に念願だった自らのショップをオープン。3年目を迎えた今では世界中から年間5000人が訪れる人気ダイビングショップへと成長させた。

 

「オープン当初は開業資金の1000万円に加え、600万円ほどの借り入れもあり大変でした。でも、仲間や周囲の協力もあって経営は軌道に乗りました。これからは自分を育ててくれた球界や周囲のために、いろいろな支援活動を行っていくつもりです」

 

 すでに昨年9月から知人を通じてラオスでの野球普及支援活動に参加。今年1月には現地を訪問し、およそ100キロの野球道具を寄贈したという。

 

「大学の後輩の宮崎(オリックス)や高校の後輩の屋宜(日本ハム)などにも協力してもらい道具を集めました。ラオスって『野球』という言葉がなく、試合も陸上競技場の一角でやっている感じなので。少しでも多くの人に野球の素晴らしさを伝えられるよう、今後も支援していきたい。同時に、沖縄の貧しい子供たちへの野球支援などもできればと思っています。そのためには自分の店をもっと大きくしていかないといけない。店は慢性的な人手不足なのでスタッフ募集中ですが…頑張りますよ」

 

 起業家として飛躍を遂げる傍ら、野球界への恩返しも忘れない。糸数さんの充実した第2の人生に終わりはない。

 

 ☆いとかず・けいさく 1984年、沖縄県生まれ。県立中部商業高から亜細亜大を経て2006年の大学生・社会人ドラフト3巡目で日本ハム入団。09年5月に一軍初昇格、6月にプロ初勝利。同年の日本シリーズ(対巨人)では第3戦に先発。13年に戦力外通告を受け現役引退。14年に自らの現役時代の背番号にちなんだダイビング店「Diving20」をオープン。現在は経営者兼インストラクターの傍ら、地元沖縄やラオスでの野球支援活動にも力を入れる。プロ通算成績は27試合8勝8敗、防御率5.12。右投げ右打ち。家族は妻と5女。

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