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「平成の怪物」にノーヒットノーランされた1998年の夏を振り返る「京都成章」エース・古岡


かつてのライバル・松坂へエールを送る古岡

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(31)】1998年、日本中の高校球児は“打倒・松坂大輔”に燃えていた。明治神宮大会、センバツ、選手権、国体と史上唯一の4冠を達成し、公式戦は44戦無敗。「平成の怪物」を倒さんと、全国の強豪が名乗りを上げては散っていった。そして、夏の甲子園決勝戦でのノーヒットノーラン…。「史上最強」と呼ばれた横浜に最後に敗れた京都成章のエース・古岡基紀が“松坂伝説”の最終章と、その後のエピローグを語った。

 

「あの世代はみんな松坂との対戦を楽しみにしてたけど、僕は正直、絶対当たりたくないと思ってました。対策? そんなの考えたこともなかったですよ」

 

 全国の強豪が松坂攻略に躍起になっていた夏、京都成章は「甲子園1勝」を合言葉に聖地に乗り込んだ。メンバーは大半が軟式あがり。古岡は1年秋まで外野手だった。決してレベルが高かったわけではない京都成章が甲子園で快進撃を続ける一方で、優勝候補の横浜は大苦戦を強いられる。準々決勝はPL学園(大阪)との延長17回の死闘、準決勝では明徳義塾(高知)に終盤6点差を大逆転して制し、決勝まで勝ち上がってきた。

 

 迎えた決勝は5万5000人の大観衆。甲子園球場の通路には立ち見客があふれ、松坂がマウンドに上がり、打席に立つたび大きな歓声があがった。

 

「完全なアウェーでしたね。みんな松坂を見に来ていた。僕は投げることにいっぱいいっぱいで、早く誰か打ってくれないかなと、そればっかり考えていました」

 

 3回までは古岡も横浜打線をノーヒット。投手戦が期待されたが、4回、2番松本にソロ本塁打を浴び、じわじわと点差を広げられる。京都成章打線は準々決勝、準決勝と“死闘”をくぐり抜けて覚醒した松坂に手も足も出ないまま、試合は終盤へ。観客のボルテージが最高潮に達し、甲子園に「マツザカ」コールがこだまするなか、ラストバッターの田中は三振に倒れた。

 

「あっという間に終わってしまって、正直あまり覚えてない。現実感がないんです。試合後もあわただしくて(甲子園の)土を袋に入れる暇もなかった。真っ白でした」

 

 史上2校目となる甲子園決勝戦でのノーヒットノーランで、甲子園での松坂伝説は完結した。大記録の裏で、敗者にはあまりにも屈辱的な幕切れだった。

 

「夏が終わってからも、みんな練習はしていました。不完全燃焼だったのかも。髪ももう伸ばしていいのに、なぜだか全員で坊主にしていったんですよ」

 

 2か月後、神奈川国体の決勝戦で、古岡は再び、松坂と投げ合うことになった。序盤に2点を失ったが4回以降はノーヒットピッチングを続け、チームメートからは「甲子園と2試合あわせてのノーヒットノーラン」とからかわれた。打線は1得点も8安打。1―2で敗れはしたが、高校生活最後の試合を笑顔で締めくくることができた。

 

「今思えば、ノーヒットノーランでよかったのかも。PL、明徳ときて、中途半端に1安打とかしていたら、誰の記憶にも残らない、つまらない試合になっていましたから。それと、国体。あれがあってよかった」

 

 大学進学後は肩を痛め、2011年、社会人野球のヤマハでグラブを置いた。自分は野球からは離れたが、憧れだった男の登板は今でも気にかけている。

 

「早く復帰しろよ、それだけです。一ファンとして、彼が叩かれるのは悔しいですから」

 

「最後までやりたくなかった相手」松坂に喫したノーヒットノーラン。怪物伝説のその続きを、古岡は今も期待してやまない。

 

 ☆ふるおか・もとのり 1980年11月22日生まれ、京都府宇治市出身。小学校3年のとき、宇治コンドルズで野球を始める。宇治中では外野手。京都成章進学後、1年秋に投手に転向する。3年春、3年夏と甲子園に出場。3年夏は全国準Vに貢献し、大会通算奪三振は松坂大輔(現ソフトバンク)を上回る57。中央大に進学後、1年、2年と左肩を故障する。卒業後は社会人野球のヤマハへ。2011年に現役を引退。現在は開発管理グループで社業に専念する。179センチ、74キロ。左投げ左打ち。

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