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究極の変則打法 前後にユラユラ…東海大相模の「牧嶋ダンス」誕生秘話


6年ぶりに「牧嶋ダンス」の動きを再現した牧嶋隼風

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録】高校野球は各地で秋季大会が開幕。新チームによる来春センバツへ向けての熱戦が繰り広げられているが、昨夏の「ヌンチャク君」や、今夏の「逆一本足打法君」など、どんな個性的な選手が出てくるのか、というのも楽しみのひとつだろう。そんな変則打法の選手が話題となるたび、再注目されているのが2010年、東海大相模・牧嶋隼風の「牧嶋ダンス」。ユーチューブなどで今も多くのアクセスを集めている究極打法の誕生秘話を、当の本人が明かした。

 

「単純に試合に出たいという一心。(東海大)相模では僕のような選手は人と同じことをやってても目立たない。出られるんだったら何でもいい、何か人と違うことをやってみようという思いで始めたんです」

 

 チャレンジしてみたいという気持ちで飛び込んだ東海大相模はまさに鬼の巣窟。100人を超える部員はいずれも中学時代から名のある選手で、「1、2年のころは監督から名前を覚えられていたかも怪しい」と牧嶋は笑う。守備に自信はあったものの、打つほうは苦手で、何とか出塁しようと編み出したのが極端に低い姿勢でのバスター打法、のちの「牧嶋ダンス」だった。

 

 前後に不敵に揺れながら、相手投手がストライクゾーンを捉えづらくなるような独特の構えを取り、四球をもぎ取るのが牧嶋の戦術だ。

 

 そのあまりに奇抜なフォームに最初は門馬監督も苦笑いだったが、主将の一二三(現阪神)の熱心な進言と大真面目な牧嶋の態度に、徐々に公式戦の出場機会が与えられた。2年秋の神奈川大会、続く神宮大会の舞台で、牧嶋は躍動した。

 

「中には批判的な意見もありました。『相模の野球ナメてんのか!』と。でも、当時の僕は真剣そのものだったし、わかってくれるOBも多かった。そもそも、ふざけてやってたら使ってもらえませんよ。ただ、今映像を見返すと、よくやってたなというか。けっこう恥ずかしいですけどね(笑い)」

 

 当時から東海大相模は県内屈指の強豪だったものの、夏の甲子園出場からは遠ざかっており、「相模の夏の呪い」「神奈川高校野球の七不思議のひとつ」とやゆされていた。けがをした春先以降の出場機会は減っていたものの「牧嶋ダンス」が呪縛を破ったのか、2010年、東海大相模は33年ぶりに夏の甲子園出場を決める。聖地では一塁コーチャーとしてベンチ入り。出場の機会は巡ってこなかったが、東海大相模は順調に勝ち上がり決勝へ駒を進めた。島袋(現ソフトバンク)擁する春の王者・興南(沖縄)を相手に一二三との投手戦が予想されたが、結果は1―13のワンサイドゲーム。牧嶋は決勝の舞台をこう振り返る。

 

「興南というより、球場の応援がすごくて。スタンドは(興南カラーの)オレンジ一色で、指笛の音が鳴りやまなかった」

 

 勝負の世界にたらればは禁物だが、もしも甲子園球場であの打法を披露していたら…。

 

「雰囲気は変わってたかもしれないですね。勝てなくても、結果はまた違ったものになってたかもしれない。出番があったら間違いなくやるつもりでいた。その(球場の雰囲気を変える)自信はずっと持っていたので。でも、門馬監督はそこまで気づいた上だったんでしょう」

 

 その後は東海大に進学、4年春には全日本大学野球選手権優勝も果たした。現在は千曲川硬式野球クラブでプレーを続けるが、「大学生になると通用しないし、やっても意味ないですよ(笑い)。たまにちゃかされて、ちょっと見せるくらいです」と高校卒業後「牧嶋ダンス」は封印している。

 

「僕みたいに試合に出れず、悔しい思いをしている子たちは全国にたくさんいる。そんな子たちの励みというか、参考程度に覚えててもらえたら。変則打法が増えること? 本気でやってるなら大歓迎です」

「相模の夏の呪縛」を断ち切り、全国制覇まであと一歩に迫った夏から6年。「究極の変則打法」は形を変え、今もどこかの球児に受け継がれている。

 

 ★まきしま・はやと 1992年7月20日生まれ、神奈川県秦野市出身。小学校1年生のとき、秦野リトルで野球を始める。中学では秦野シニアに所属、3年生のとき関東大会ベスト8。東海大相模では2年秋からベンチ入り。3年春、3年夏に甲子園に出場し、3年夏には全国準優勝。東海大進学後、4年春に全日本大学野球選手権優勝。卒業後は保険会社に勤める傍ら、千曲川硬式野球クラブでプレーを続ける。ポジションは内野手。177センチ、80キロ。右投げ右打ち。

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