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広島25年ぶりVを支えた緒方家の「優勝犬」


ビールまみれの緒方監督。最高の笑顔だ

 1991年を最後に優勝から遠ざかっていた広島が7度目のリーグ制覇を決めた。不退転の決意で就任2年目の今季に臨んだ緒方孝市監督(47)の執念と熱意、さらには愛犬とのエピソードまで一挙に公開する。

 マジック1で迎えた10日の巨人戦(東京ドーム)では初回に2点リードされたが、3回に先頭の黒田がファウルで11球粘って相手先発マイコラスをいら立たせ、1番の田中が四球で出塁。続く菊池の遊ゴロを坂本が捕り損ねて打球が外野へ転々とする間に1点をもぎ取った。すると4回には“神ってる”鈴木と松山の2者連続本塁打で逆転。今季を象徴する戦いで25年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた。

 黒田と新井が復帰した昨季は優勝を期待されながら4位に低迷。緒方監督にとっては勝負の2年目だった。春季キャンプでのミーティングでは選手、スタッフを前に「今年もダメだったら責任は取る」と明言。自ら退路を断った。後悔だけはしないよう、準備は昨秋のキャンプから始めた。掲げたのは「投手を中心に守り勝つ野球」。打撃に関しては「振る力をつける」ことに主眼を置いた。「振る力がつけば、きわどい球をカットしたり見極めることもできる」との持論を石井、東出、迎の3打撃コーチに伝え、若手を中心に朝から晩までバットを振り込ませた。徹底できた背景には、選手に飽きさせない工夫をする石井コーチのアイデアマンぶりもあった。

 エース前田(現ドジャース)の抜けた穴を埋めることが急務だった投手陣の底上げでも“野手目線”の独自の調整法を取り入れた。いい例がドラフト1位ルーキー・岡田だった。開幕ローテ入りを果たし、先発として期待をかけていたが「完投するのが当たり前だった学生時代の習慣なのか、初回は良くても2回に力を抜くようなところがあった」と見るや、二軍でリリーフの経験を積ませた。「初球の入り方」などを学ばせるのが狙いで、連投を含む4度の救援登板を経て一軍に戻った岡田は5月14日の中日戦以降に先発した12試合中9度のクオリティースタート(6回以上を自責点3以下)を記録した。

 自分のしたい野球、目指す方向性をコーチに伝え、方法などは各コーチに託す。一方で、松下幸之助の名言である「任せて任せず」を肝に銘じ、一軍のみならず二軍の選手起用なども逐一把握することを心がけた。「反省と準備」に時間をかけすぎて、球場を後にしたのが午前3時を回ったこともある。

 全てが順風満帆だったわけではない。5月を終えて首位にいたが、29勝24敗1分けで貯金5。ただ、4月半ばにルナが故障離脱したことで一軍に昇格したヘーゲンズが、ケガの功名で勝利の方程式の7回にピタリとはまった。4月26日のヤクルト戦では新井が通算2000安打を達成。鈴木が2試合連続サヨナラを含む3戦連続V弾の“神ってる”働きを見せた交流戦終盤からは32年ぶりの11連勝をマーク。7月23日の阪神戦で黒田が日米通算200勝を挙げるなど話題満載で、ファンの後押しもシーズンを通して続いた。

 優勝にかける意気込みは、家庭内にも表れていた。「特に趣味があるわけでもないし、コーチ時代と違ってランニングする時間もなくなった。何か気分転換させてくれるものが欲しかった」と、指揮官は6月半ば過ぎにペットの購入を決めた。第1候補はフクロウだったが「エサがネズミとかで家族に反対された」。選んだのは生後3か月の黒いフレンチブルドッグ。偶然にも胸部の白いブリンドル(差し毛)は「C」の形だった。最初に候補となった名前は売り出し中の「誠也」。しかし「グラウンドで誠也に厳しいことを言っているのに家で『誠也~』とかわいがるのも…」とボツに。結局、希望も込めて「優勝」と名づけた。

 愛犬が家族の一員となってからは帰宅時間も早くなった。遠征先からは欠かさず、かな子夫人に「優勝はどう?」と連絡している。仕事にメリハリがつくようになったばかりか、夫婦の会話まで増えたとなれば「優勝くん」の果たした役割は大きい。グラウンド内外で「優勝」を手に入れた緒方監督の次なる目標は、もちろん1984年以来32年ぶりの日本一だ。

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