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「ミスターアマ野球」杉浦正則 日の丸と歩み続けた数奇な野球人生


シドニー五輪はプロアマ混成での出場となった(左から杉浦、古田敦也、松坂大輔)

 2008年北京五輪から8年。晴れて2020年東京五輪で野球・ソフトボールが正式種目に復活することが3日(日本時間4日未明)、リオデジャネイロで行われたIOC総会で決まった。そんな記念すべき日にバルセロナ、アトランタ、シドニーと3度の五輪に出場し、世界記録でもある通算5勝を挙げた「ミスターアマ野球」こと杉浦正則が、日の丸と歩み続けた数奇な野球人生を振り返った。

「不思議なところで、一回行くともう一回行きたいなって必ず思う場所なんですよ。とりつかれたといえば、とりつかれていたのかもわからないですね」

 同志社大で頭角を現した当時は、プロに憧れる普通の大学生。いくつかのプロ球団から声はかかっていたものの、実力に自信が持てず、社会人を経由してのプロ入りを考えていた。そんななか、参加した北京アジア大会で、監督から言われた言葉が杉浦の人生を左右する。

「『このチームは2年後のバルセロナで金メダルを目指すためのチームだ』と言われてビビッときた。もともとオリンピックはすごく好きで、柔道や女子バレーをよく見ていた。同じ舞台に出られるなら、出たいなというのがきっかけでした」

 当時、五輪の野球競技に出場していたのはアマチュアのみ。日本生命入社後、2年目の年に念願の五輪出場を果たす。準決勝の台湾戦にロングリリーフで登板するも2本塁打を浴び、初の五輪は銅メダルに終わった。

「どこかで最強といわれたキューバに勝って、金メダルを取って、という気持ちがあった。プロはいつでも行ける。オリンピックは今しか行けないですから」

 帰国後、杉浦の心はすでに4年後に向いていた。しかし、すべての選手が五輪を目標にしているわけではない。アトランタ直前の95年、チームメートの仁志敏久(日本生命―巨人―横浜―米独立リーグ)がプロ入りを表明するなど、当初はプロへのアピールの舞台という認識だった。

「オリンピックの切符を勝ち取った次の日の紙面ですかね。『仁志プロ入り!』、聞いてねえよって。本人の将来のことだけど、予選を戦ったメンバーとはできれば一緒に行きたかった。別の選手は試合に勝ったのに『(打てなかったので)僕はブルーです』と言ったらしくて。そのときは、まあ叱りましたね」

 2度目の五輪は決勝で念願の王者キューバと対戦。先発した杉浦は2回6失点で降板、銀メダルに終わったが「自分のなかではすごくうれしかった。充実感のほうが悔しさよりも勝ってた」と述懐する。その充足感は、いよいよプロへと気持ちを傾かせる。帰国後は、ダイエー(現ソフトバンク)、そしてMLBのメッツからオファーがあった。

「当時28歳ですよ。普通プロって26ぐらいまでじゃないですか。初めてプロに飛び込んでみようかと思った。でも、まだ金メダルを取ってない。もしアトランタで金メダルを取っていたら?(プロ入りの可能性は)あったと思いますね」

 その選択は、杉浦にとって皮肉な結末を迎える。4年後のシドニーではチーム編成がプロアマ混成に、さらに4年後のアテネからはオールプロに変わった。

「複雑でしたね。(アマを選んだ)自分の勝手な意見ですが。シドニーの次のオリンピックは無理。目標がなくなったというか、燃え尽き症候群ではないけど、やりきったというのはありました」

 主将としてプロアマ混成チームをまとめたシドニーを最後に、現役を引退。その後日本生命の監督を務め、今はNHKの解説や侍ジャパン社会人チームのコーチとして野球に携わる。

「仮に僕が今大学を卒業したら? 社会人で2年やって、その後はプロを目指したかもしれないですね。今、社会人野球では目指すものが失われつつある」
 2020年東京五輪、野球競技は追加種目となることが正式決定した。だが、チーム編成は事実上、プロに限られる見通しだ。

「最終的にはオールプロでもいい。ただ、アマチュアの選手にも選ばれるチャンスというか、選考の場があればいいと思う。その選考に参加した選手が肌で感じたものをアマチュアの現場に持ち帰れるような、そんな仕組みがあればいいですね」

“ミスターアマ野球”は訴える、「アマチュアスポーツの祭典」をもう一度――。

☆すぎうら・まさのり=1968年5月23日生まれ、和歌山県九度山町出身。橋本高ではエースとして2年秋に県大会優勝、3年春に近畿大会ベスト4。同志社大では4年秋にリーグ優勝、明治神宮大会を制し日本一に輝く。91年日本生命に入社。92年バルセロナ五輪(銅メダル)、96年アトランタ五輪(銀メダル)、00年シドニー五輪と3大会連続出場。五輪通算5勝は世界記録。00年に現役を引退するまで都市対抗野球10年連続出場。92年、97年と2度、優勝とMVPにあたる橋戸賞を受賞している。06年から09年まで日本生命監督を務め、就任初年度に日本選手権準優勝。現在は社業に従事する傍ら、NHKの解説や侍ジャパン社会人チームの投手コーチを務める。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。

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