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「球速表示不能」と言われた超遅球誕生の秘密


現在はJR北海道でプレーしている西嶋

【気になるアノ人を追跡調査!野球探偵の備忘録(20)】2014年夏、とある魔球が甲子園を沸かせた。東海大四(南北海道)のエース・西嶋亮太から放たれるボールは、テレビ中継のカメラ映像から見切れるほどの大きな弧を描き、そのまま捕手のミットに吸い込まれた。「球速表示不能」と言われた超遅球誕生の秘密と、巻き起こった論争のその後を、魔球の使い手が明かした。

 

「正直、たまたまなんです。1球目でたまたま、これ以上ないってボールが出た」

 

 優勝候補の一角、九州国際大付との1回戦。4回先頭打者に西嶋が投げた初球は、大きく山なりの放物線を描き、ストンと捕手のミットに収まった。その後も甲子園の空に幾度となくかかる美しい軌跡に、湧き上がる歓声。エースはマウンドで笑った。

 

 中学2年のとき、チーム事情で投手へ転向。制球力に自信はあったものの、球種は直球とスライダーのみ。球速のない西嶋はすぐに行き詰まった。

 

「まずは徹底的にコントロールを磨きました。それから投球術。どこでどのコースにどの球を投げるのが効果的か、そればっかり考えてた」

 

 行き詰まった頭をほぐすため、遊びで投げ始めたのが超スローボールだ。中2の全道大会で一度、披露したものの、当時は話題になることはなかった。

 

 その後、東海大四に進学。高校では野手を目指したが、入学早々に大脇監督が投球をテスト。制球力を評価され、再び投手としての道を歩くことになる。

 

「でも、やっぱり成績が伸びなくて。そのときあれを思い出したんです。投球術に組み込めないかな。こういうのもありかなって」

 

 実は「スローボール」ではなく、あくまで「スローカーブ」だとか。カーブ回転をかけることでより高く、コントロールしやすい球が投げられるという。

 

「自分には突っ込むクセがある。超スローカーブはボール球ですが、絶対に打たれることのない球。一度リセットというか視野を広げる目的と、『見せ球』として相手の感覚を狂わせる目的、相手をじらして精神的に優位に立つ目的がある」

 

 こうして甲子園のマウンドで5度、西嶋は魔球を披露。湧き上がる大歓声、1球で球場を味方につける力は本人も意図しなかった副産物だ。

 

 だが、予期せぬ騒動も起きた。ネット上で一部のツイッターアカウントが「高校生らしくない」「投球術とは呼びたくない」と西嶋を批判したのだ。

 

「試合が終わってLINEを見たら、うわーっておめでとうのメッセージが届いていて。ようやく収まったかなと思ったらまたうわーっと鳴りだした。『お前批判されてんぞ!』って。僕自身は気にならなかったけど、周りの友人はカンカンでしたね」

 

 もとになったアカウントは炎上、ついにはレンジャーズのダルビッシュまで論争に加わり、西嶋を擁護した。

 

 大会後、西嶋は大脇監督から「何をされるかわからない、お前の足を引っ張ろうというやつもいる」として1か月あまり“外出禁止”。

 

「あの批判ツイートでより有名になって。いつ誰が見てるかわからない、しっかりやらなきゃいけないなと思えるようになった。今では逆に良かったなと思います。ただ、いまだに握手とか写真だとかは、もう勘弁してほしいですけど(笑い)」

 

 高校卒業の折、騒動の原因となったアカウントからDMを介して謝罪のメッセージが届き、西嶋も「頑張ります」と応じたという。

 

 現在はJR北海道で練習に励むも、スランプにもがき苦しむ。

 

「あんなにコントロールに自信があったのに、今は全然入らないんです。原因はわからない。今までこんなことなかったので、かなりしんどいですね」

 

 超スローカーブも、今はそれどころではないという。

 

「話題になった人ほど、ダメだったときに周りの声も大きい。それが逆に自分を追い込む理由になる。自分がもう一度エースになって、都市対抗の大舞台で投げることになったら、そのときは投げてみたい。それまでは封印です」

 

 甲子園の大観衆を魅了した魔球“超スローカーブ”。その軌跡が起こす感動は、大舞台にこそふさわしい。

 

 ☆にしじま・りょうた 1996年4月10日生まれ、北海道帯広市出身。小学校1年のとき、軟式野球チーム帯広東フェニックスで野球を始める。小学6年のとき日本ハムファイターズジュニアで全国大会準優勝。中学では十勝帯広シニアで内野手兼投手として、2年春の全道大会で優勝。東海大四では1年春からベンチ入り。3年夏にはエースとしてチームを甲子園出場に導くも、2回戦敗退。高校卒業後はJR北海道に就職、現在もプレーを続ける。169センチ、61キロ。右投げ右打ち。

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