3日に行われた第94回東京箱根間往復大学駅伝の復路で、青学大が往路(2日)2位から東洋大を逆転し、10時間57分39秒の大会新で史上6校目となる総合4連覇を達成した。「ハーモニー大作戦」を成功させた青学大の原晋監督(50)は、公式会見で昨年に続き陸上界改革をアピールするなどこの日も“絶口調”。この裏には、嫌われても構わず古い体質をぶち壊すという信念がある。「一言居士」に徹する名将の胸の内は――。

 終わってみれば、青学大の層の厚さばかりが光った。2日の往路で2位に甘んじながら、この日は山下りの6区の15キロ付近で小野田勇次(3年)が、首位を走っていた東洋大を逆転。52秒差をつけ7区の林奎介(3年)にたすきを渡すと、林が区間新記録の走りでさらに差を広げた。8区の下田裕太(4年)も区間賞の快走で応え、残る9、10区も青学大が首位を独走して総合優勝を果たした。

 昨年10月の出雲駅伝、同11月の全日本大学駅伝で優勝を逃し、箱根駅伝での必勝を誓っていた原監督は「創部100周年を優勝で飾れて大変うれしい」と笑顔。喜びだけではとどまらず、陸上界にも“直球”を投げつけた。

「私は箱根駅伝、陸上のあり方を常日頃から意識して発言している。旧態依然としている方々で嫌う人もたくさんいるが、陸上界を盛り上げたい一心。ライバルはサッカー界、野球界です」

 今大会から、鉢巻きや手袋に大学名やロゴを入れてはいけないという規定ができた。これに対し、昨年12月29日の区間エントリー発表の際に「みんな(装飾品などで)母校への思いとか絆とかを思って頑張って走るんじゃないですか? 世の中の流れに逆行している。腹が立ってならない」などと話し、猛反発。昨年の大会では日本長距離界の強化方法についても意見を述べるなど、陸上界改革へ積極的に持論を展開してきた。

 一方で、歯に衣着せぬ原監督を「ビッグマウス」と嫌う面々がいるのも事実だ。それだけに、4連覇達成を受けての公式会見で「旧態依然としている方々」を刺激するような発言をしては、さらに敵を増やしてしまいかねない。しかし、原監督は本紙直撃に「別に悪口は言ってないよね。それが本質だから。私は常に本質を追い求める男だから」と、なんらブレることなく言い切った。

 もちろん、それだけ覚悟を決めて発言した「信念」だということ。青学大関係者は「周囲からは嫌がられるでしょうね。でも、それはわかっていること。煙たがられたとしても、監督は古いものをぶち壊そうとしているんです。その代わり、ものすごくいろいろなことを勉強しているし、やってきたことに自負がある。仲良しこよしは嫌な人。どれだけ嫌がられても、発言すれば問題提起になるとわかっているんです」と名将の胸の内を代弁する。

 細かい規制にとらわれる大学駅伝界はもちろん、有望な学生を獲得しても強化できない実業団に対しても「破壊なくして創造なし!」とばかりに強烈ビンタを浴びせている…というわけだ。

 原監督は「強くなければ、メッセージを伝えられない。選手に大会前のミーティングで『俺に力をくれ』とお願いした」と選手にも協力を請い、見事4連覇で今後の「発言権」を得た。「勝ったので、たぶんまたビッグマウスが出ると思いますよ(笑い)」(前出の関係者)。陸上界の異端児の快進撃は、まだまだ終わらない。