陸上世界選手権(英国・ロンドン)男子400メートルリレーで銅メダルを獲得した多田修平(21=関学大)、飯塚翔太(26=ミズノ)、桐生祥秀(21=東洋大)、藤光謙司(31=ゼンリン)が15日、羽田空港で帰国会見を行った。昨年のリオ五輪銀メダルに続く表彰台で日本は実力国の仲間入りを果たしたことを改めて証明。2020年東京五輪での金メダルも「夢物語」ではなくなったのか? メンバーの言葉から3年後の頂点への可能性を探った。

 世界選手権では日本初の表彰台に立った日の丸スプリンターたちは会見で晴れやかな表情を浮かべた。1走の多田は「日本を背負う代表の初めての試合でメダルを取れたのは本当にうれしい」とメダルの重みを実感。アンカーの大役を務めた藤光も「(4走は)急に決まったけど、いつでもいける準備はしていた。今までの経験が生きた」と胸を張った。

 世界大会では昨年のリオ五輪から2大会連続となるメダル獲得。もはや日本は世界の実力国と言っていい。3年後の東京五輪では金メダルの期待も大きく膨らむ。飯塚は「今回は地元の英国が優勝した。東京では僕たちが地元ならではの力をいただける。金メダルを取って国歌(君が代)を流せれば」と世界の頂点へ向けて意欲を見せた。

 実際、メンバーの言葉を聞く限り、根拠がない“努力目標”とも言い切れない。その一つが、今大会で見せた選手層の厚さだ。当所は1走が予定されていたサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)は右太もも裏の痛みで出場を回避。不動のアンカーだったケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)は不調のため決勝でメンバーから外れた。将棋に例えるなら“飛車角抜き”で結果を残した。

 桐生は「日本のレベルは個人もチームワークもすべて上がってきている。また来季、さらに新しい人が出てきたり皆のタイムが上がってくると思う。自分も負けずに自己ベストを出していければ」と競争の激化を肌で感じ取っている。

 さらに他国に目を転じれば、世界最速を誇ったウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)は今大会で引退した。男子100メートル金メダルのジャスティン・ガトリン(35=米国)も3年後はさすがに年齢的にピークを過ぎているだろう。世界のトップ国が世代交代を迎えるなかで、日本は20代前半が主体。3年後は大きなチャンスと言える。

 東京での金メダルの根拠は他にもある。「リオよりバトンパスの内容は良くなかった。それでもメダルが取れた。(明らかに)失敗した予選も通れる力がついている。走力がついてきている実感がある」(飯塚)

 優勝した英国がバトンパスで格段の進歩を見せた一方で、日本はお家芸で“不発”に終わった。これは、まだまだチームとしてバトンでも上積みできることの裏返しでもある。もちろん、実際に金メダルをつかみ取るためには個々のさらなる走力アップが大前提。まずはサニブラウン、桐生らの9秒台突入が待たれるところだ。