リオ五輪大丈夫か?「安全管理マニュアル」の怖い中身

2016年06月23日 10時00分

“凶悪都市”で五輪は無事に開催できるのか。日本オリンピック委員会(JOC)は21日、都内でリオデジャネイロ五輪(8月5日開幕)の第2回監督会議を開き、大会に向けた現地情報などをアナウンスした。中でもJOCが神経をとがらせているのが治安問題。19日未明にはリオ市内の病院が武装集団に襲撃される事件が発生したばかりで、もはや日本選手団に被害が出ても不思議ではない状況だ。JOCでは“究極マニュアル”を策定したが、驚がくの対応策とは――。

 リオ五輪開幕を前に耳を疑う事件が飛び込んできた。現地報道によると、19日に武装グループが、身柄を拘束されていた組織幹部を救出するために病院を襲撃。銃撃戦の末に患者1人が死亡、看護師と警官の2人が重体だという。この組織はリオの貧民街「ファベーラ」を支配する麻薬組織と見られるが、ついに市街戦に至ったことにリオ市民も衝撃を受けている。

 問題がより深刻なのは、襲撃事件の舞台が五輪の指定病院だったことだ。開会式が行われるマラカナン競技場やマラソンのゴール地点とは目と鼻の先。もともと現地の治安の悪さは指摘されてきたものの、JOC関係者も「まさかここまでとは…」「どこが平和の祭典なの?」と驚きを隠せないでいる。

 JOCは、この日の監督会議で「日本代表選手団 安全管理マニュアル」を各競技団体に配布し、改めて注意喚起した。JOC国際部の西村賢二部長はこう語る。

「先日も、在リオデジャネイロ日本国総領事館の関係者や現地事情に精通する方から治安情報を得てきたばかりでした。やはり治安は相当悪いと言わざるをえません。街中で電話中、スマホを取られるなんてザラ。JOCは毎大会、安全管理マニュアルを発行していますが、従来よりもはるかに厳重な対策になりました」

 たとえば、マニュアルには「強盗に遭遇した時の対応」が表記されている。「抵抗せず要求された金品は素直に渡す」「相手の顔を直視しない(顔を覚えられたと認識されないため)」などに加え「他人が襲われているのを見ても、むやみに助けに行かない」と“見殺しもやむなし”という非情な対応を求めている。西村部長は「徹底してほしい。助けに行ったところで何もできませんから」と説明した。

 特に、現地では警察を含めた警備関係者や大会関係者もまったく「信用できない」という。原油価格の暴落で国内経済は悪化。政治も汚職スキャンダルでルセフ大統領の職務停止など、混乱が続く。さらに公務員の給料支払いが遅延し、警察官の士気も大幅に低下。関係各機関がまともに機能していないため、まずはトラブルを避けることが最優先されるわけだ。

 もちろん、その影響は日本選手にも及ぶ。日本選手団総監督であり、日本レスリング協会の高田裕司専務理事(62)は困惑顔でこう話す。

「リオの街で『ジョギングをしないでくれ』と言われました。外出するときは基本的に団体行動。IDカードも外さなければいけないし『JAPAN』と書かれたものを身に着けるのもダメ。街中での買い物もしちゃいけない。選手たちにとっては、非常に面白くない五輪になることでしょう」

 選手村で軟禁生活を強いられるアスリートたちにも、リラックスなど期待できない。体操男子の内村航平(27=コナミスポーツ)や卓球女子の福原愛(27=ANA)、バドミントン女子の奥原希望(21=日本ユニシス)ら有力なメダル候補選手たちも緊張感が漂う中で調整に臨まなければならず、本番でのコンディションにも大きな支障が出かねない。

 今後、橋本聖子団長(51)率いる日本選手団は7月3日に結団式を行い、同31日にはいよいよ“凶悪都市”リオデジャネイロに乗り込む。日本選手、関係者が被害に遭わないことを祈るばかりだ。